ゴッドサイダーより
「冥界逆葬送」


「ハッ」
 再び意識を取り戻した霊気を襲ったのは
文字通り奈落の底へ落ちる落下感だった。
 無限に続くような 縦穴の深底から濃厚な臭気が
落下している身体に感じるほどの 狂風とともに吹きすさんでくる。

「こ…ここは 冥界」
「チィィッ」
 いまだ霊気の首筋に喰らいついていた
(蝿の王)ベルゼバブが (魔王の息子)霊気の瘴気に溢れる
血を滴らせながら 身を離した。

 落下する霊気の背から跳びすさり 獣の牙を髣髴させる
岩石のような 壁に張り付こうとする ベルゼバブ。

 と、その脚に…そうはさせずと霊気の手が。

「は、…はなせ 霊気!オレは地獄へなどと落ちん!!
 地獄になど帰らんぞ!!」

 霊気は ベルゼバブを完全に消滅させる為に
1000万ボルトを己の身体を介してショートさせ この冥界へ落ちた。
死を覚悟した不敵な笑みを浮かべて呟く。
「フッ きさまは オレとともに 永遠に消え去るのだベルゼバブ」

「はなせー! チクショーッ!!!」
ガクン

 二人の落下がとまった。
帝王の称号をかなぐり捨てベルゼバブが 必死に手を伸ばし
霊気を脚にぶら下げながらも 壁に張り付いたのだ。

「グオオオ…」
「チィッ」

 ガルルルルルル…

 小康状態の二人の耳に入る響き渡る獣のうなり声。
改めて 下を見ると 先ほどまでは 虚無のように永劫に続くかと思われた
穴にも 果てがあるようだ。
 その底には 獰猛に目を見開いた6つの瞳と 大きく開いた3つの獣のあぎと…

「そうか…ここが、地獄の入口といわれる
 魔獣番犬ケルベロスのあぎとか!」
「何を今更…
 あのケルベロスの牙に この魂を噛み砕かれれば
 神側の人間(ゴッドサイダー)といえども かならず死ぬのさ!」

「しかし オレは違う なぜなら……
 ホホホ…霊気 わかるか これが」

 ベルゼバブがそこに取りだしたのは 二つの眼球。

「これは おまえの友人 阿太羅の目玉さ…
 こいつがないと ヤツは一生目が見えんぞ」
「あ…阿太羅の目。きさま…それを どうするつもり…」

「こうするのさぁ!!」

 そう云うやいなやベルゼバブは その目玉を放り捨てた。

 底へ向かい自由落下する眼球。

「阿太羅ーっ!!」
 咄嗟に霊気はベルゼバブを掴んでいた手を放し その目玉に手を伸ばす。

 霊気の身体が虚空に舞った。

「し…しまったぁ!!」

 ここは冥界 神と悪魔の相互不干渉次元。
神側の人間の十天闘神の第一たる毘慮遮那を守護神にもち
悪魔王サタンの血をひく 鬼哭霊気も一介の人間でしかない。

「ウワアアアアッ!!!」
 叫びを上げ ベルゼバブを道連れにすることも出来ぬまま
開かれたケルベロスの口へ 虚しく落ちていく 霊気。

「ホーッホッホッホッ!!」
 ベルゼバブの嘲笑が響く。

 ケルベロスの獣気につつまれ
(これまで…なのか)
 そう、霊気が思ったその時

ガクン!

 得物を掴みそこなったケルベロスの牙が
ガチガチと噛み合わされる。
 
 霊気の身体は魔獣のその鼻づら 寸前でとまっていた。

 無我夢中でのばした その右腕に巻きつく 一本の 光輝く 帯び。

 遥か天から清冽な光が満ち溢れた。

「なにぃ!」
「…流璃子」

 そこに流璃子がいた。
光り輝く帯びを纏い 神々しく光り輝く裸身。
 彼女は 冥界で唯一力を発揮することを許された
神と悪魔の両方の血をひく一族 鬼哭一族の巫女。

「若那微若那阿爾多阿波羅爾多…吟!」
 目を見開きトランス状態に入りながら 祝詞を詠みたてる。

(さぁ 霊気 あなたは その衣を握っていればいいのです
 自然に外界にでられるでしょう)

「る…流璃子…なんてことを その身体で 冥界逆葬送を…」
 霊気の身体がスルスルと羽のように軽やかに 光り輝く天の出口へ昇っていく。

「ウッ!」
 術を成功させ 意識をもどした流璃子の身体が大きく揺らぐ。
やはり かなりの消耗を受けているようだ。

「流璃子」
「だ…大丈夫よ 霊気。さ…じっとしていて」

 顔を蒼白にさせ 額に汗を浮かべながらも
そう云う 流璃子の瞳は限りなくやさしかった。


どマイナー♪


ゴッドサイダーより 流璃子
「冥界逆葬送」

 えーと 元ネタ分かる人いますでしょうか?
このゴッドサイダーというタイトルは 週刊少年ジャンプで昭和六十二年から一年半ほど
連載され 単行本全8巻 最近、愛蔵版も出た 巻来功士の エログロオカルト漫画です。
 その少年誌にあるまじき
美しい裸体(CGの格好が彼女の戦闘状態)を惜しげなくさらす
大人な美少女(矛盾してないんです)なヒロイン流璃子に
当時の小学生の私は密かに惚れてました。
 そして、何を隠そう 私が初めてバストトップまで描いた女性。
深夜11時(当時の子供時間)に 部屋を真っ暗 机の蛍光灯だけ付けて
となりで寝てる妹 見回りに階段を上ってくる 親の足音を気にしながら
初めて描いた 単行本3巻の"ケルベロスのあぎとの巻"の4ページ目の3コマめ
鎖骨から下が途切れている為 想像して描いた流璃子の裸の乳房と乳首。
今でもそのコト よく覚えています。
 それからは 狂ったサルのように 彼女がアップで描いてあるカット 模写しまくりましたねぇ
そんで、鍵のかかる机の引き出しの 唯一の中身へと…
 なもんで、自称18禁CG作家の私にとっては 筆下ろしのお姉さんにもあたる
忘れられないキャラなんです。

 もし、原作に興味をもってくれた方は こちら。
「流璃子の衣」
ネット界 唯一無二の オンリー流璃子ファンHPです。

2001-04/24