白く柔らかい肌、赤い髪、
イシュバーンの龍族への呪いを避けるため方法は
人間の身体になることだった。
 その腕は苛酷な戦いに挑むには、あまりにもろく脆弱だった。
しかし、アトルシャンに迷いはなかった。
人の身がこんなにも弱いものだからこそ、タムリンを守りに行かなければならないのた。

 時空を越えイシュバーンの大地に立つ龍の魂を持つ戦士。

 タムリンとの再会、
魔軍との果て無き会戦や戦い、
多くの仲間との出会い、
波乱に満ちた冒険…

二人は仲間と共に
動乱の大地イシュバーンを駆け抜けていった。


 人間と龍族、魔族と古代神(ホルス)の一族…

野心と陰謀、血と殺戮の渦巻く中に
僅かな希望の光を求めての その戦いは
若き戦士たちの 英雄伝説。


そして
イシュバーンは 再び聖地となった。






 ある辺境の村の、静かな部屋に
アトルシャンとタムリン新婚初夜の夫婦の姿があった。

「アトルシャンの子供が欲しいな。無理かな?」


 女癖の悪さと直情径行な性格が 仲間の中では お荷物だったハスラム王子も 今や英雄王。
エルバードの国庫の全てから、その広大な領地から 何でも望みの品を褒美に
と云われた二人だが、功績として貰ったのは 小さな一軒屋。

 二人には何の悔いもない。
なぜなら二人は あのドラゴン小国で共に育った幼き日より、
お互いそれぞれが それぞれに 世界の全てだったのだから。

 アトルシャンには どんな栄耀栄華も かたわらにタムリンの笑顔がなければ なによりも虚しく、
タムリンは金銀宝玉の豪奢なドレスで着飾ったところで、
踊る相手アトルシャンがいなければ何の意味もない。

 この粗末だが 平和で清潔な小さな寝室で、
やっと 遠きあの日以来の 二人だけの時間を得る事が出来たのだ。


「いや、それは もし万一に、その…生まれてくる子供が…
 俺のような、龍と人の間の子じゃ…」

「ううん、きっと 大丈夫。
 わたしはホルスの血をひく者。
 思い描くだけで大地の形を変えると言われた ホルスの王女なのよ」
  そんな わたしが これほどに願っているんだもの、きっと 大丈夫」
 タムリンは そう言いきると、アトルシャンの首に手をからめた。

「わたしは アトルシャンの妻なのよ。あなたはわたしの夫。
 お願い、花嫁の方から 言わせないで」
「タ…タムリン、
 俺は キミが好きだ。君のために全てを捨てた たった一人の可愛いタムリン。
 でも…き、君を抱くことは…」

「どうして?」
「だから俺は龍で、タムリンは…」
「そんなの関係ないって言ってるじゃない、
 アトルシャンのバカ!」
「タ ム、…リン」
 アトルシャンの声が、タムリンの唇にふさがれて立ち消えた。

 アトルシャンは飛びついてきた タムリンの身体をしっかり受け止めると
優しく腰に手をまわし抱きしめた。

「あッ…女の子に恥ずかしい真似させといて
 アトルシャンなんか大っ嫌い!」
 しっかり抱き止められると、タムリンはうってかわって アトルシャンの腕の中でもがいた。
手をつっぱり肩を押しやろうとする。

「悪かった、タムリン」
 そう言って、アトルシャンは腕に力を込め、ぎゅっと彼女を抱きしめ
今度はアトルシャンの方からキスをした。

「む…うぅ」
 タムリンはなおも もがいたが、しばらくすると ふいに体の力を抜き、
アトルシャンのくちづけに身をまかせ、胸の中にくずれおちた。

「大好きだよ。タムリン」
 唇をはなし、真っ赤になった顔を 彼の胸に埋めて隠しているタムリンの耳元に
優しく しかし はっきりと囁いた。

「…アトルシャンのバカ」
 胸のうちで呟かれたタムリンの声は、先とは違って かすれ甘やかなものだった。

 アトルシャンはにっこり微笑むと タムリンをやさしく抱いたまま 二人ベッドへ倒れこんだ。




タムリンの性格 違うかな?



続く