文館裁判傍聴録(?)


拘留理由開示公判(2002-10/1)

東京地方裁判所

初公判(2002-12/03)

第二回公判(2003-02/05)

第三回公判(2003-02/26)

第四回公判(2003-03/18)

第五回公判(2003-04/30)

第六回公判(2003-06/02)

第七回公判(2003-07/01)

第八回公判(2003-07/14)

第九回公判(2003-07/30)

第十回公判(2003-09/26)

第十一回公判(2003-11/04)

第十二回公判(2004-01/13)
一審判決


有罪判決
懲役一年執行猶予三年


東京高等裁判所

初公判(2004-09/14)

第二回公判(2004-10/26)

第三回公判(2004-12/09)

第四回公判(2005-02/17)

第五回公判(2005-03/17)(最終)弁論は欠席しました

第六回公判(2005-06/16)
二審判決


有罪判決
150万円の罰金刑


最高裁、上告を棄却
二審判決が確定
(2007-06/15)


有罪判決
150万円の罰金刑

2007-07/10更新
即日書き込みしてる掲示板からのログ抜粋です。

サイト内ですが、このページへの直接リンクはリンクフリーです。


 私と同じく毎回傍聴してる松文館裁判関係のサイト

児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委内コンテンツ

「松文館裁判」

証言など出来る限り筆記記録から網羅、一見さんにも大変分かりやすい
「裁判の争点」などがあります。興味のある方は是非。


「いざこざの外」

漫画家ビューティーヘア氏の奥さんのブログです。
近しい者としての視点から、この裁判に関して綴っています。
旦那さんと二人を傍聴席で何度もお見かけしました。



[1248] 逮捕 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2002/10/04(Fri) 02:42

 漫画家の"ビューティ・ヘア"氏と出版社「松文館」の社長が逮捕されました。
対象は成人コミック「密室」で、刑法175条わいせつ図書による漫画単行本の摘発は初。

http://www.sankei.co.jp/news/021003/1003sha038.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021003-00000171-jij-soci

 「ROSF」でも9月の末から事情聴取を受けているという情報が出ていましたが、
今回正式に逮捕という形になりました。さて…これはどういう意図があるのでしょうか。
現実が色々動いてきました。



[1274] 裁判所へ行ってみた 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2002/10/16(Wed) 18:00

 刑法175条わいせつ図画販売の罪に問われ逮捕・勾留されている
松文館の社長、編集長、漫画家ビューティー・ヘア氏の勾留理由開示公判へ
この問題への興味、抗議の意味として一般傍聴してきました。
 連絡網AMIをはじめとしたその手のサイトやネット上でオフとして人集めしてたようですが
平日の午前中ともあり話題になるような大規模なデモとはなりませんでした。
しかし、最低目標の傍聴席54は満席、何人か定員オーバーで追い出されることに。

 逮捕されている3人は10月の頭に逮捕されてから既に二週間、弁護士以外の人とは面会出来ず、
世の中の情報も弁護士を通してのみ、差し入れの本も一日3冊まで、応援の手紙は
直に渡す事は出来ず窓越しに読み取ってもらうのみ(警察側には見せなくて良い)の
獄中生活をそれぞれバラバラの各所で過ごしていました。
 そんな3人が逮捕以後はじめて外界の人間の顔を見る機会、それがこの勾留理由開示公判で
励ましの意味での、「これだけのみんなが見守ってます」という意味での今回でした。

 さて潜入レポですが、東京霞ヶ関のドーンとでかい裁判所の小さな一室、テレビドラマと全く同じ部屋で
傍聴席は家族の方々から出版関係の人、そして連絡網AMIのプロ、アマの作家、編集者のコテハンさんから
コミケの米沢代表まで顔をそろえました。弁護士は児ポ法問題から、突発的なこちらの問題まで
八面六臂に担当を務める精力的な山口弁護士、検察側は和久本検察官が眠たい顔で姿をあらわします。
そして3方の入場、腰なわ、手錠で一人につき左右から二人の警官(?)が付き、凶悪犯罪者扱いです。
 裁判官がモゴモゴと決まった文面を読み、その不当性に山口弁護士が「その理由は?」と突っ込めば
それは答える必要は無いとばかり。詳細は述べませんがかなり強引な警察の逮捕劇、
その後の勾留だったらしいのですが、明確な理由は返事として一つも明らかにされませんでした。
 被疑側の意見陳述。編集者、社長、作家それぞれに、何故今なのか? 何故自分たちなのか?
どういう基準なのか? そしてワイセツについての自論を展開します。
この辺は青天の霹靂な逮捕で社会から隔絶され各自それぞれに
今までの出版、表現の現場での体験から独自に考えたのでしょう。
色々アラはありましたが、それは心情的な意見陳述でした。
 最後に山口弁護士の登場。さすがのプロです、掲示板での切捨てゴメンな書き込みや
2ちゃんまで利用する見識とその人柄を実際に知る方からの風聞から、
いわゆるオタクくずれの人だと思っていましたが、仕事場では違いました。
戦略をまず3人の身柄の解放を目的に、現在まで続いている拘束の不当性を次々と述べていきます。
当たり前ですが私のような素人には、どこにも弱点や隙などは見えませんでした。
 これに対して検察側はどう返すのか、それに返す丁々発止な弁論の展開を期待したのですが、
ここで終了。
勾留理由開示公判とはその名の通り裁判官が勾留する理由を公開する手続き。
今回はただの情報(互いの言い分)の公開の場だけで約1時間の公判は終わりました。

 次の段階は10/22に出る検察官の起訴、不起訴の決定。
嫌疑が不十分な不起訴になればこれで無罪、お終い。逆に不当勾留の
損害賠償を請求するかもしれません。
罪が有るとされる起訴にも二つ、
略式請求(検察側、とりあえず罰金払えばこれでおしまいにするよ。ハイ、分かりました)と
公判請求の二つの道。公判請求は「この者を処罰したい」と、いわゆる裁判への起訴。
「私は罪を犯していない」と略式請求を断っても同じ裁判となります。
 裁判となった場合は年度末か年明けくらいに第一回があるような台所事情らしいのですが、
起訴、不起訴のどちらに転ぶか? 略式の道は示されるのか?
の点さえ現在のところ分かりません。

[1288] 有罪か… 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2002/10/22(Tue) 21:18

<原文のまま転載可>
-------------------------------------------------------
本日、編集長と作家は略式命令により罰金刑の言い渡しを受けて釈放
されました。
残念ながら、社長は公判請求(正式起訴)されてしまいました。
明日一番に保釈請求をする予定です。

山口 貴士@東京弁護士会
-------------------------------------------------------

 [1274]と過去ログ[1248]で云った、松文館の社長、編集長、作家ビューティ・ヘアの
逮捕の件はこうなりました。略式請求は罰金刑を即座に飲む事。
正式起訴された社長は裁判を受ける事となりました。
ちなみに日本の起訴された裁判の有罪判決率は9割を超えています。

 先日の世論調査の結果も各社マスコミで取り上げられ、いよいよお国が、
本気で世論作りに動いてきたという所でしょうか。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021019-00000640-jij-soci
(反対=児童ポルノへの倫理感覚乏しいって何なんだよぉ)
悪法も法です。だからこそ児ポ法はねじくれた改正案通しちゃまずいんだよなぁ。



[1347] 裁判所へ行ってみた2〈1は{1274}〉 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2002/12/03(Tue) 16:22

 刑法175条わいせつ図画販売の罪に問われている松文館の
社長の第一回公判へ、この問題への興味、抗議の意味として一般傍聴してきました。
 今回も傍聴席54は満席。ただ微妙に客層が違ったような〈オフ会として募集してなかったからね〉。
著名人は連絡網AMIのプロ作家、編集者らのアクティブメンバーとコミケの米沢代表。
大御所の漫画家の"ち○ ○○や"〈公表して良いか知らないので〉など。

 さて中身なのですが、法廷場所は前回と同じトコ。第一回の今回は
本人かの確認、検察側の意見陳述と、第二回の証人喚問の予定組み
だけの1時間で終了、事務手続きに終始し正直拍子抜けだったかも。
 被告側は18禁漫画「蜜室」はワイセツではないと主張。それを争点に
検察側が意見を述べるのですが、幼い頃からのガラっパチで腕自慢だった前歴を1に。
〈身柄を釈放されてる今回はスーツだったのですが、前回の勾留公示の時はGパンに皮ジャン。
 一漫画家から己の腕っ節だけで会社社長になった人なんですよ。その辺の成り上がり性から
 漫画業界からもアウトサイダー的に思われてるらしいです〉
 2に"平成10年頃より消しも薄くし詳細かつ克明で過激に走ったワイセツ物を売った"との事情を。
検察側はこの話を軸に、警察、卸業社、販売店、同業他社などから集めた
50以上の調書〈対峙する被告側から開示の了承受けた〉や、それを補う証人を武器に
裁判を争うつもりのようです。被告側が心配していた学者著名人からの意見は今のところ無い模様。
 さてその証人なのですが、3人。トーハンなど流通卸しの関係者が二人と、もう一人は
漫画の自主規制団体の会長だかを務め、自らも桜桃書房の社長の立場の人物。
同業者のどうやらライバルのようです。この三人の持つワイセツ観を盾に
松文館の「蜜室」をワイセツ物と認めさせようとする論戦は次回の第二回公判に。
来年の2/5〈水〉13:15よりの2時間以上の長丁場のようです。

 閉廷後の山口弁護士から傍聴の皆さんへの解説とこちらからの戦略。
 まずこの裁判はかなりのスピード裁決と予測、3回目も2月、4回目も3月と予定を告知され、
来年の夏休み前には判決に持っていきそうな按配だそうな。
 裁判の争点は「蜜室」がワイセツか否か。松文館のワイセツ観が時世にあってるか否か。
それを軸にサブカルチャー全体の表現への規制の意味を論じたいなど言ってました。
 その武器として、オタク文化を知識武装したいため、一般からの
支援組織を募集。組織といってもサイトやML、掲示板などのソレで知識の補強が目的で
圧力団体めいたものではありません。その関連戦略の一つとして著名漫画家のつてはありませんか?
とかも尋ねられ江川達也とか出来ればいいなぁなども言ってました〈希望なだけですよ〉。
 後は逮捕のきっかけとなった通報の真偽。高校生の子供を持つ一般市民というのは
本当らしいです。ただそれだけで実際動いたかは警察、検察の都合で詳細は不明。
松文館の「蜜室」だったのは、たまたまその雑誌が「姫盗人」だったというだけで
業界の勢力争いや、次回の同業者の証人とは無関係。
 
 そして裁判としては短期決戦らしいのですが、普通の人から見れば半年の長期戦、
松文館の書籍を今後共に宜しく、それが最大の支援というお話しでした。

 肩透かしの今回でしたが、次回の証人喚問はどういう展開になるやら。
「ぅを…」って感じの人物が出てきただけに、話がもつれるととんでもない事になりそうです。
っていうかホントどうするつもりなんだろう。消しや過激さのレベルだけですと
「業界全てが腐ってる」と大弾圧なお上の雷を呼ぶような気がするんだけど…
実際現実的には向こうもそんなに暇でもないのかな。

 ちなみに日本の逮捕され裁判に及んだ際の有罪率は9割以上。
負け戦なのはかなりの所覚悟しているのですが、その争いの過程で議論する事で
規制の鎖が緩くなればと自由を少しでも広げる事に
意義があるんじゃないかと思っています。

 私の知識は現場で黒子って聞き耳立てた情報収集によるものだけ。
松文館すらも単行本持ってたけど「あ持ってた」と気がついた位のお客さんなド素人。
桜桃出版はあったかな、米沢代表は似顔絵そっくりです。

「毎日新聞」より。11時半に終わったばかりなのに早っ。
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20021203k0000e040058000c.html


 裁判は固有名詞が正確じゃなかったので一部訂正。
桜桃出版は桜桃書房の方が正しいのかな、うちにもありました。自主規制団体の正式名称は
出版倫理懇話会ですね。その会長さんは、出版ゾーニング委員会の委員でもあります。
成人コミック系の業界団体の代表という立場なのかな。松文館が出版倫理懇話会に加盟してなかったかは
よく分からない。手元の単行本は黄色の成人マークはありましたが、
"この作品はフィクションです"などの文言は無いや。
 スピード判決はどうなんでしょうね、向こうは大事にせずチャッチャと終わらせたいとか思ってて
それに対して山口弁護士は騒ぎ大きくしてサブカルチャー全体の問題にしようとしてるのかな
とか思ったり。夏休み前って今年の通常国会が終わった時期ですよね。


[1484] 裁判へ行ってみた3 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/02/05(Wed) 19:10

 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第二回公判を傍聴してきました。

 今回も傍聴席54は満席数人があぶれる事になりました。
その面子は身内親族や出版業界関係の方、コミケの米沢代表は3回連続出席。
後から聞いた話しによると警察の人間も数人まじっていたそうな。

 被告弁護側からの意見陳述。被告の貴志社長は「松文館一社のみでなく
漫画全体の問題と捉え、判断のラインを知りたい」など述べます。
 ちょっと自画自賛になるのですが、弁護士からは、私が自ポ法に反対してるロジックと同じ
http://www87.sakura.ne.jp/~cou/hantai.htm
「過去の裁決の前例の"公共の福祉"を具体化せよ」とか
「国家からの道徳の押し付けはあってはならない」などを語り、
現在のワイセツの定義に"三与言説"とやらがあるのですが、1にいたずらに性欲を刺激し興奮させる。
2に普通人の羞恥心を害する。3に善良な概念を害する。など三つの悪徳を与えるなどとされているようです。
これのライン判断基準がどこにあるのか? 弁護側としてはそれは
流動する現在の社会通念の中にあると思うと述べます。
 そして今回の絵漫画は初という話しに進み、写真、映像は明確な被写体がいる以上
実際にそのような性行為が行われており、ワイセツもやむなしと認めますが
漫画の登場人物は人間ではなくキャラクターでディフォルメされているもの。
実写もモザイクというディフォルメで合法とされていますが、漫画で描写される性表現は絵であること、
その時点でディフォルメされており、作者のイメージに過ぎないと展開していきます。
 そしてまぁここ10年の性的表現の解禁の流れなどを社会通念の変化として述べていました。

 検察側が選んだ証人の尋問がまず検察側を先手として始まります。
一人目は出版倫理懇話会(出倫懇)の現会長であり桜桃書房元社長で
ティーアイネットにも深く関係してる業界の代表の一人。
 質問は主に出倫懇について突っ込まれます、結局この任意団体は
警察からの要請で昭和61年頃出来たらしいのですが、具体的なガイドラインは無く
「都の条例にうちの本発禁くらったよ」などの情報共有の会だったようです。
消しの度合いは全てそれぞれの出版社の倫理に従っていて会からは口をはさめない、
現代表としても出倫懇に加盟していない松文館の「蜜室」の修正具合は
妥当かどうかは自分からは言えないと言を左右しました。
 ただ逮捕当初に参考証人としてとられた調書の中では、自分ならこんな薄い網トーンではなく、
白ヌキにするだろうなど優等生的な答えをしてたということなのですが…。

 20分の休憩をはさんで二人目は流通大手トーハンの課長。
こちらの人は首尾一貫していて、中身で流通の制限はしない。仕事では見たことはないが、
本屋で見たことがある。消しは薄いと思う、こんなのはじめて見た。
ただそれによってワイセツかどうかは自分には判断できない。
「ここでの判決できまるものでしょう」と逆に検事に質問を返すような人でした。
 そしてここでも逮捕当時の参考調書が引き合いに出されるのですが
「判断基準が分からないので自分には判断出来ない」と終始言ってるのに、
「ワイセツだろう? ワイセツの可能性は高いだろう?」と押し問答な誘導尋問。取られた調書を見せてくれ
と願っても、読み聞かせのみ。こんな事は言ってないと修正願いを出しても修正されたかは
最後まで自分の目で確認できず、ハンコを押す事になり、今回の公判でも資料として使われました。
 このやりとりは傍聴席そして裁判官にも調書捏造の疑いの可能性も…
として、検察のマイナスポイントとなった模様。

 ただ全般的に裁判官の基本姿勢は検察より、被告側には冷たかったり、
応援団的な傍聴席に対してもカリカリした態度でしたね。
感情的にはあっちよりらしいですが、そんなことで判決が出されたらたまりません。
初の手合わせ、証人への検察側の尋問、被告弁護側の反対尋問だったのですか、
検察側が用意した証人であるはずなのに向こうとしては裏目に出た感じ、
表現者の気骨を貫いたトーハンの課長さんの方は特に。

 次回は2/26(水)13:15より霞ヶ関の東京地方裁判所。
トーハンと同じく流通の日販の人とビューティヘア氏が検察側証人として呼ばれ
今回のような双方よりの尋問を行うようです。
 被告弁護側の証人は刑法、憲法、社会学、学者。まんが専門家、精神医学者などを
考えているそうですがそれはまた今度。



[1520] 裁判所へ行ってみた4 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/02/26(Wed) 21:11

 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第三回公判を傍聴してきました。

 今回も傍聴席は満員。裁判所のすぐ側の皇居の30年ぶりのお堀洗いを見物して
開廷20分前についたのですが、結構ギリギリでした。

 今回も検察側の証人尋問。一人目は取次ぎ大手の日版のコミック仕入れの課長さん。
検事の質問は前の二人とほぼ同じ、
Q「蜜室」はワイセツかどうか? Aワイセツの基準が無いので分からない。
Q学術性、芸術性はどうか? Aよく分からない。
Q個人的にいやらしいと思いましたか? A特に感じない。
Q社会的影響は如何なものか? A社会通念は流動的で云々…はぐらかし。
Q青少年に対しては? A成人向け漫画です。
Q取次ぎの基準は? A内容に対しては無い。
 と過去二人と同じような問答が繰り返されました。質問の内容も同じなら
答えの内容も同じ。さすがに検事もこれはと怪しんで(証人と弁護士の接触は禁じられてるので)、
逮捕当時の参考調書をまた持ち出します。そしてその中では
ワイセツであると認めた。あからさまなワイセツ物と確認できたら
松文館に内容の修正を求め、応じなかったら販売停止出来たかも。などの180度違う
証言調書を出され、その調書をじかに見せられてプレッシャーを。疲れていたから…と、
しどろもどろになる証人に対して、裁判官まで『取調べの目的は?』「ワイセツで有るか否かでしょうか」
『えぇそうです。では貴方はその根本さえ理解できずに捺印書名したのか?』
「…疲れていて頭がついていかなかった」最初の宣言で"嘘はついたら偽証罪に問われる事もあります"
とあるので、あからさまな虚偽は無いにしろ、取調べの過酷さから
調書の中では今現在とはかなり違う答弁をしてた印象。

 30分の休憩をはさみ今日の二人目、通算四人目の検察側の最後の証人に、既に略式請求を飲んだ
(罪を認め懲役を逃れるために罰金を払った)漫画家ビューティー・ヘア、本人が呼ばれました。
こちらは作家、己の作品をいやらしいものと思って描いている。消しがあろうとなかろうと
消し前程で描いてるのでいやらしさにはあまり変わりは無い。本人の認識としては
修正は編集任せ、無修正だったら法に触れるかもしれない。検挙には何で自分だけ?
と不満がある。と正直に述べていきます。
 ならなぜ略式であるが罪を認めたのか? 「一刻も早く出たかったから」。
痴漢の冤罪で捕まった人も略式を飲まないで半年も拘留されたり
警察の裁判を本気で争う気なら雑誌「姫泥棒」連載の全ての漫画家をしょっ引くなどの脅し、
残された家族親類縁者への世間的体面。後から聞いた話しですと同じく略式を飲んだ
松文館の編集長も彼がいないと松文館の本が発行できなくなる、会社が潰れるから、
そんな実際的現実的な理由で本心ではないが略式を認めたと述べました。
現在も連載再開してるのですが、それがエロ漫画て無い(現物知らないんだけど、ソフトになった?)のも
何が悪かったか分からないので、罪を認めたのではないが、同じテツは踏みたくないから、と。

 最後に弁護士と裁判官が質問「ワイセツの意味を理解してますか?」
これは私もあやふやにしか分かってなかったし、ビューティー・ヘア氏もそうだったのですが
いやらしいを堅苦しく言った言葉だと思っていました。
しかし法学的なワイセツという言葉は違うらしく、三与言説の
"普通人の羞恥心を害する事。 性欲の興奮、刺激を来す事。
善良な性的道義観念に反する事" を現在は過去の判例からの定義としてるようですが、その力は
ワイセツ=違法なもの、ワイセツ物=銃や麻薬みたいな激ヤバな物らしいんですよね。
だから検察がワイセツ物かどうか、危険物かどうかと、法に触れると知りながらやってたのか
とやっきになって聞いたりしてるんでしょう。いやらしいか?人前で読めるか?
とかも三与言説にあてはまるかどうかなんでしょうね。
 このワイセツの具体的明確な判断基準、なぜ同様な他社のはOKで「蜜室」が違法なのかは
弁護側の各界の学者の証人によって戦うらしいのですが、それはまた今度。
 次回は3/18(火)霞ヶ関の東京地方裁判所。松文館社長の調書不同意による
質疑の場となる模様。そん次が被告弁護側の証人喚問かな。

 閉廷後の報告説明会では警察検察の調書の取調べのキツさ
「何で自分なのかと言うのなら、比べてやるから松文館以外の他社もゲロっちまえよ」などの
押し問答もあったそうですがそれも耐えて、作者先生(罰金も肩代わりしたし)と会社維持の編集長は
取り合えず解放したが、社長は断固戦うなど言ってました。

 児ポ法改正の空想表現規制の問題は現実動いてきましたね。
取り敢えずは見送りになったっぽいですが、青環法の時の読売新聞の誤報もあったしなぁ。
「asahi.com」
http://www.asahi.com/national/update/0225/003.html



[1548] 裁判所へ行ってみた5 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/03/18(Tue) 21:41

 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第四回公判を傍聴してきました。
 1な拘留理由開示公判はこのページ上段の過去ログ[1274]。2の初公判は[1347]。
3の第二回公判は[1484]、4の第三回は[1520]。

 今回も傍聴席は満席、ただ微妙に人が減ってきたかな。
 今日の公判は被告人の調書の任意性を巡る被告人への質問。
つまり自白が被告人の本意から発したかどうかとという
ワイセツ性云々とかは置いといて、取調べ段階の自白の調書と
裁判上での証言、どちらが価値あるものかとの争い。
警察の捜査の手順などが説明されました感じです。

 9/19取調べ(任意同行)。青天の霹靂の突然の自宅へのガサ入れの後
警察署へ連行され取調べがはじまりました。右も左も逮捕かどうかも
よく分からず、特段業界内で突出してるわけでもない「蜜室」が何で
違法なのかもよく分からないまま、こんな事は言ってないといっても無視され
席を外されたりの、延々5時間くらいの押し問答の末
蜜室はワイセツ物であるとの調書に捺印。
この直後、弁護士に連絡を取りました。
 10/1逮捕。社長、編集長、作家の三人が逮捕。逮捕後に二度目の取調べ。
やはりここでも問答が行われましたが、松文館の専務の奥さんや常務をなど
何人でも逮捕する用意があると脅されワイセツ性を認める調書にしぶしぶサイン。
 10/16拘留理由開示公判後。取調室でどう反論しようが
定型の段取りのあるような調書を変える事は出来ないようなので、
(社長も編集長も調書上では一字一句同じ言葉で「このようなワイセツ物を
 出版して申し訳ない。今後は当局の指導に従います」などあるそうな。)
自分の声で発言するためにこの場を設けたそうです。
案の定、当日の夜に呼び出され、何生意気な事をしてるんだと恫喝が。
拘留も二週間が過ぎ、会社の色んな業務が滞ってきたために、何はともあれ
外へ出るためにこの時も、裁判での意見陳述とは真逆の調書にハンコを。
 10/22社長以外の二人を略式(罰金刑)で釈放。
起訴され争う構えを見せた社長の保釈は11/13までに伸び、10/1以降の二ヶ月近くを
拘束されました。

 こんな被告自らの取調べの様子を法廷上で証言として弁護士の質問で引っ張り出します。
その後は検事のツッコミ。これも色々あったのですが結局は
「結局は調書に同意したんだろうハンコの意味分かってる?」「本音(良心)的には納得してたんじゃないの?」
これには沈黙。「何で本意じゃない」とハッキリ言わないのかとも思ったのですが、
そうしますと取り調べへの軽視、態度が不良とされ、裁判官の心象が下がるらしいんですね。
机上の空論で理屈ばかりな挑発的な検事の質問に、熱くなるシーンもあったのですが、
その時は裁判官自らの秒即ツッコミ(被告へのたしなめ)が入りました。

 今ごろながらやっと裁判というものが分かってきたのですが、結局「ゾーニング」の
意味すらしらない、(東京都条例は刑法ではないので簡易裁判所止まり)
現在の警察の取調べの様子も、世間の流行をも知らない、一消費者の私以上に素の状態、
司法の独立な裁判官を、どう論理的、心情的に
自分らの理屈に丸め込むかって、検察と被告弁護側の戦いなのね。
 私も傍聴に行ってるのはこの問題への興味の為なのですが、
出来るだけ客観的平等な目線で感じよう、それをこうしてレポしようと臨んでいるので、
(どっちかによると情報の信用性って低く見られそうで、ただでさえ一個人の主観なのに)
私自身がどう感じたかってのが結構裁判の趨勢を表してるかもしれませんね。

 閉廷後の弁護士さんのミーティング。次回は4/30(水)被告弁護側の証人喚問を
社会心理学の学者先生を呼んでやるらしいです。今回の裁判官の経歴とかも
話しがあったのですが、かなり頭のカタイ御仁の様子。今日の公判はどういう印象に映ったのかな。
色んな取調べの時の無理も理解出来たようですが、まだまだあっちよりかな。
 全体スケジュールも何だか伸びそうで、判決は2003年末くらいになるかも…とか。
そこまでかかるとなると、私もさすがに皆勤賞は無理かなぁ。



[1638] 裁判所へ行ってみた6-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/04/30(Wed) 19:27
 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第五回公判を傍聴してきました。

 今日も傍聴席は満席。そして今回から被告弁護側の証人喚問
反撃が始まりました。弁護側の証人一番手は社会学者でもある、
宮台真司都立大助教授。最初の五分くらい延々と己の履歴を語る事に。
私は専門卒なので正直初めてこんなに喋れる弁士な人を見たのかもしれない。

 その証言は社会学論。事後の説明会でも2つのポイントがあったと
話があったのですが、ゾーニングの意味を知らない裁判官や
私などには大学の授業のように映ったかもしれません。
 1つ目は「何故、刑法175条があるか?」
まずワイセツという言葉はそれ以前から社会的生活を営む人間の間では習俗として
存在する。その定義は非性的空間に性的を持ち込むことで
社会が混乱する事を防ぐため。しかし、それとは違う形で刑法にワイセツ罪はあります。
何故か? 江戸末期に不平等条約を押し付けられ以後、明治維新と近代化を
目指す日本にとって「性の楽園」と海外から評された江戸の性風俗はあまりに
未開の蛮族風に思われた対外的な為。国内的にも日本国民として纏める為に
ある種の締め付けが必要であった。
 対して現在は、そのような事はないので不要となる。かえって
人権外在説、個人の基本的人権の上に公序良俗、社会的道徳があった時代から
個人の自立良心人権を尊重した人権内在説に移ってるのが、先進国であり
逆効果であると述べます。この変化の理由は社会の成熟と情報化によって一律な
道徳の共有が上手くいかなくなった為。
 2に「メディア論」
いわゆるメディアの悪影響とは本当にあるのか? 実際調査を行っている
社会学的には"銃の火薬とひきがね"という言葉があるそうです。
その心は育ちなどの個人的な生活環境で内在的にそういう衝動を持っている人を
火薬と称し、メディアは摸倣としてその切っ掛けにはなるかもしれない、これがひきがね。
ただ火薬の入った銃は誰でも引き金をひけば人を殺せるように、きっかけも
メディアだけに限らない。火薬さえなければひきがねを引いても玉はでない、
これが大多数の人。メディアを規制するということは、その大多数の人の
憲法にもある基本的人権である幸福追求権を規制する事に繋がる。
 実際、アダルトビデオレンタルが始まったのは1985年。爆発的普及をしましたが
99年の調査では白書より犯罪数は減少している。ビデオを見たけど
犯罪を起こしていない率は3499/3500。
何故反比例となったのかは、代理効果。いわゆるガス抜き。それの反論として
暴力を行うものは暴力メディアに必ず触れている、メディアこそ悪だ。
というのがあるのですが、それも逆で、元々暴力が好きなわけで
スキだからメディアに触れ、実際に振るった。「卵と鶏どっちが先だ?」
とも思われがちですが、火薬とひきがね論が社会学的なんだそうな。

[1639] 裁判所へ行ってみた6-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/04/30(Wed) 19:27
 20分の休憩をはさみ一時間半近くこのような講義が弁護士の質問で
先生答えるという形で進みます。そして検察側の反対尋問。
『なら175条どう改正するべきなのか?』三余言説に定義するワイセツの絶滅ではなく、
非性的空間に性的感覚を持ち込まないこと、すなわちゾーニング区分けを徹底する事。
最初に言ってた話しでした。その後も
『青少年には有害ですよね?』」「精神的に未熟な時期ですし
自己責任能力がないので確かにそうでしょう。悪影響だと私は思ってませんが
親が子供へ見せたくない権利は尊重する」『「蜜室」読みました? 消しは透けてるでしょ』
「読みました。中身でゾーニングに値するかを考える外国に対して
部分抜粋で計る日本のそれは個人的には妥当と思っていない」
小さな質問をする検事に対して、持論で明確に答える証人という構図。

 すごすごと引込む検事に煮え切らなくなった裁判官側が
『では解禁の根拠は?』と突然のツッコミ。私的にはその口調といい質問といいハァ?
「そんな事は言ってません。ゾーニングを徹底しようと言ってるんです。
 表現の存在自体の否定は法律としてはおかしい」
『そのゾーニングですか。それが守られない場合は?』
「行政の注意警告にたいする自主規制がベストだが、最悪、刑事罰もやむをえない。
保護法益は見たい物を見る権利、見たくないものを見ない権利、幸福追求権にもとずいて」
『そのゾーニングのラインはどうやって決めるか? ラインが妥当でないと
 裁判を起こされたら?』
「説得できる材料を集める。仕事に女性性を持ち込むセクハラや、露出の高い
 キャミソールの流行などワイセツの基準は常に変わるもの」
『……』この辺の問答は裁判官の一人がかなりカリカリしてました。
最後に裁判長が『「蜜室」は一万部も刷られたわけだが、この影響は?』
「漫画としては多くは無い。それだけの人口がいるんです」
 この裁判が何を争われているのか、何を裁くのか、という根本に
突き刺さる法廷となりました。

 私的感想。学者って知で戦えるんですねぇ。テレビとかの茶番の討論しかしりませんでしたが、
こんなに公的な場で持論を発言出来るのなら、色んな社会の矛盾も少しは解決できそうな気がするけど…。
 閉廷後の説明会では証人先生さんも付き合ってくれて、挨拶に
「想像以上に歯応えが無かったかも。逆に正論が通るか心配になってきましたよ」
 次回は6/2(月)東京地方裁判所、被告弁護側の第二の証人は現状講義その2、刑法学者さんです。
先生さんの講義は、漠然と個々の自立を大事としたいと思っていた私の考えを
調査論理で補強してくれる形になりました。しかし官でも民でもない司法の中立をある種の権威、
己の良心こそ正義だと思ってる裁判官に対して、このワイセツ論はどう映ったのでしょうか。

 帰りの最寄の私鉄で明日から健康増進法の施行により、終日禁煙、喫煙ルームの全面撤廃だとか。
タバコ吸わない私だけど、これもゾーニングの問題だと思うんですけどね。
厳しい世の中です。



 児童ポルノ法の改正案問題。自民党案の骨子が公表されました。
http://www.asahi.com/politics/update/0429/002.html
http://jbbs.shitaraba.com/news/bbs/read.cgi?BBS=648&KEY=1033749794&START=936&END=933&NOFIRST=TRUE
 これに基づき現国会に提出、議論されるようです。
骨子とはいっても仮のものですが、危惧されていた空想表現規制は入ってません。
単純所持や、何年か後の改定条件などが問題として残ったとしても
これがそのまま通るのなら、取り敢えずは喜んでいいんじゃないかな。
 延々と続く政治運動する気にはなれない私です。という事で
久しぶりに児ポ法ページの更新。



[1697] 裁判所へ行ってみた7-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/06/02(Mon) 19:21  
  刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第六回公判を傍聴してきました。

 6(7)回目にしてとうとう傍聴席が埋まらず。コミケの米沢代表も
夏コミ抽選のこの時期忙しいのか初の欠席。

 通算二人目の被告弁護側の今回の証人は刑法学者の園田寿教授
(前関西大学教授)。そして大阪府青少年健全育成審議会会長もしています。
この青少年育成云々は地方自治の条例で長野を除く
全国の都道府県に同じような条例があります。
この条例の法律への格上げと改変強化版となったものが昨年春話題になった青環法です。

 ということで、刑法講義と青少年健全育成条例の実態が主な供述内容に。
 刑法学者としてのスタンスは刑法175条は違憲ではない、過去の判例にある
ワイセツの定義、三与言説(1にいたずらに性欲を刺激し興奮させる。
2に普通人の羞恥心を害する。3に善良な概念を害する)も妥当である。
しかし、普通人にあるよう社会通念は時として変わるものである。
具体的には? 警察の取締りが長いこと無いと、その当時はワイセツであったであろうものが
なし崩し的に甘く受容され、以後はワイセツではなくなる。
世界を繋ぐネットの普及で日本で違法、他国では合法な情報が普通に見られるようになった、
など。
 青少年健全育成審議会とは? 大阪府の場合は青少年課がランダムに、
或いはPTAなどからの持込のあった書籍(実写も漫画も雑誌も)やビデオを
書店、ビデオ、流通、PTA、市民、らの代表10数名で審議し、青少年に有害とされたものには、
有害図書指定。18歳以下の者へ売らないようにゾーニング(区分けの部分陳列や
 18禁のラベリング)指導する。従わないと30万円以下の罰金。
月一開催でだいたい雑誌は30〜40冊だとか。この会議で直接指定されるものを個別指定といい
他に包括指定(審議会を通らなくても同じレベルのものを自主的に有害図書とする。自主的といっても
違反すると同じ罰なので自己申告って感じですか)があるそうな。
 「蜜室」は個別指定は受けてないが、もし審議に上がったら指定を受けるでしょう。
ただ「蜜室」が特段異常だとは思わない。最近の傾向としてビデオも薄消しに
写真もヘアヌードで薄消し、漫画では消しの無い物もある。有害図書は18禁だが、
成人へは合法的に販売可能なもの。たまにこれは酷い175条に違法なワイセツ物だと
審議を留保するものもある。そういう場合は府警へ持っていった事も、ただし漫画では今のところ皆無。
 など1950年以降50年近くも機能している条例があるので、青少年への有害論議を
175条のワイセツの判断基準に持ってくるのは妥当ではない。あくまで成人の社会通念を
基準にすべきと続きます。
 他にも個人的な感想で、有害(いやらしさの影響)度として絵である漫画は実写のリアルさには
逆立ちしても敵わない。小説チャタレイ夫人もワイセツ物だとは思わない。なぜなら
実写は誰が見ても別に解釈しようが無いそのものだから。漫画など普通の大人が読んでも
興奮などしないでしょうと。


[1698] 裁判所へ行ってみた7-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/06/02(Mon) 19:22  
 そんな1時間の法廷の後20分の休憩をはさんで検事の反対質問。
では漫画でワイセツ物は無いと? CGなど実写に近い技術もあるので可能かもしれないが
今までは見た事無い。有害図書止まりだ。
作家はリアルを求めていると言っていましたが? 私はこんなのリアルとは言えない。
中にはそう思う人もいるかもしれませんが、175条は個人法益、見たくない権利などの
個人の主観を基準にしてるのではなく、社会法益、性風俗の安定の為にあるものだから
関係ない。
 ここからまたモザイクの有り無しで計る日本のソレはおかしい、文脈で計るべきだと
ちょっと色気を出した持論を展開します。そこにすかさず別の検事の突っ込み。
それはイメージということですよね。ならリアルでない「蜜室」も2万部の需要があるのだから
ワイセツ物の可能性もあると 先程のお話しと矛盾してませんか?
その辺は法律家なのでよく分かりません。となんかよく分からない話でお茶を濁すことに。
 その後ネットの現在に話が伸び、現在の利用者は国民三人に一人。有害情報の規制は
発信は不可能なので受信側で、大阪府では今年三月より公的の場所のPCは全てフィルタリングを
かけるような条例が出来たそうな。それへも1/3とは過半数ではないが、それで社会通念が変わったと
言うのはどうよ? と突っ込みが。今回に新たに入った舌鋒鋭い検事さんでした。
 すかさず弁護士のフォロー。有害図書が売れるのは性的興奮を求めてのものですよね?
はい、そうです。三与言説は3つ全てを含めた場合のみで、いたずらな性欲の刺激とは
ことさらにと言うことであり、性欲全ての否定ではない。と話を落ち着けます。
 最後にまたカリカリしてる裁判官の一人が『175条は合憲ですよね』「はい」
『三与言説も妥当ですよね』「はい。不明瞭な定義など法学的には他にも多々ある事」
と今更な念を押して終了。

 閉廷後の説明会では刑法学者さんも付き合ってくれて挨拶。
「175条は刑法学的にも未分野。学者として今回の裁判の判決は興味がある」
 リアル談議で免疫の無い警察や検察、司法の人には、劇画(?)が
写実なリアルに見えるそうで、話がかみ合わないなどありましたが、
今日の法学の権威からの否定の証言は重い、とある意味敵中の味方(?)の先生をひたすらヨイショ。
 次回は7/1(火)精神科医の斎藤環先生が証人。「社会的ひきこもり」「戦闘美少女の精神分析」
「若者のすべて」「『ひきこもり救出』マニュアル」などの著書がある重度のオタクな人だそうな。
 前回は統計社会学で中道から、今回は法学側からの裁判官より視点での切り崩し、
次回は味方な販売購買層視点と様々な策で戦っている、この裁判です。
今回は前回に比べ結構、裁判官の心象に残った気がするのですが、
次回でぶち壊しにならなきゃいいけど。客観的中立な裁判官にこんな心配をするのは
激しく矛盾してるのですが、これがそれこそリアルな世の中でもあると思います。
 後、初公判でも報道があったマスコミ毎日新聞も傍聴に来てるらしく、
今回は説明会で顔出し、取材で写真撮影などもありました。

 私と同じく毎回傍聴してる松文館裁判関係のサイトにリンクさせてもらいました。
証言など出来る限り筆記記録から網羅、一見さんにも大変分かりやすい
今回の「裁判の争点」などがあります。興味のある方は是非。

「松文館裁判」
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun-index.html

「園田教授の意見書」ってのはあれね。法廷のさいに事前に用意した概要の
文章を裁判官と相手検事に渡すらしいです。だから法廷はある意味やらせとも言えるのですが、
質問とかで臨機応変な対応を臨まれます。

[30] 裁判所へ行ってみた8-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/01(Tue) 19:20  


  刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第7回公判を傍聴してきました。

 傍聴席は一応満席かな。ただ変な背広の集団が意味不明なとこで
途中退席したりも、なんかの研修? それとも警察…じゃないよなぁ。

 被告弁護側三人目の証人斎藤環氏は精神科医として病院を持つかたわら、
文筆活動でPHP、太田出版などから「社会的ひきこもり」「戦闘美少女の精神分析」
「若者のすべて」「『ひきこもり救出』マニュアル」などの本。
青少年健康センターとやらの理事で、本人それぞれには深刻な悩みを聞く電話番。
政府すじの不登校調査研究、教育手帳作成などの仕事にも関与し、
今年8月からNHKの「人間講座」に講師として出るそうな。
その根底は莫大なオタク知識。でいて医師としての知識や各種のバランスを備え
官民(?)色々なところで精力的に働いていると、そういった人物。

 供述の内容はオタクの精神分析。結論から先に云いますと、
漫画を読むには、その絵というフィクションそしてディフォルメを許容する下地に、
学習、経験、慣れがその能力として必要である。
 「蜜室」は読みました。メディアの悪影響については"それはない"とする
社会学者宮台説で現在は結論が出てると思ってる。医者として臨床した数は
ひきこもり患者300〜400。初診だけや相談も含めると1000〜2000と
現在のひきこもり青少年の現場を見ている。ひきこもりの定義は
家族以外の他者と六ヶ月以上接触を持たない事だけ。性的には健康だが
エロゲーの大量消費者の傾向も強い。
 アダルトビデオやポルノ雑誌、写真集など実写メディアは比較的一般的なものであるが
二次元を対象に欲情する人口は限られた100万〜200万といういわゆるオタクな人。
オタクとマニアは勘違いされやすいが、蝶を収集する人がマニア。
蝶の美を奇麗だと思い妄想するのがオタク。実物は必要なく
絵や写真、資料でも構わないのがオタク。
そんなオタクの妄想はマスターベーションファンタジー。
空想を前程に空想であることを楽しみ(一次創作)、
空想に空想を重ね(二次創作)、空想の中で全て完結している。
それは人誰もが持つ多層なる虚構認識のうちの一つ。実際に彼氏彼女、配偶者を持ちながらも、
それとは違うベクトルで二次元には萌えられる。
(さすがに萌えなんて言葉は使ってませんよ)つまり一種のフェティシズムで、
分かる人にしか分からない。分からない人には分からないもの。
なので175条の定義する普通人を煽動するようなものでは無いという話。
 証言の最中そのフェチを強調する為に持ち出したのがショタ同人誌。
仕事と趣味をかねて200冊の中から厳選したと言ううちの一冊は
江戸川乱歩のような少年の顔と芋虫の身体と巨根を持つ極めつけのフェチもの
(絵のタッチは普通のショタだけど)。
後はコミケなどの説明や春画は当時のエロ漫画とかの話。
「蜜室」は実写的リアルでなくアニメ的デフォルメが底地にあり性器もリアルとは言えない。

[31] 裁判所へ行ってみた8-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/01(Tue) 19:21  


 30分の休憩をはさんで検察側の反対尋問。今日はいつもの検察官一人だけでした。
斎藤先生の話をなんとか理解だけは出来たというだけで、特段突っ込んだ質問などなく
論の確認で終わり。ボカシ消しの意味は? には関係者ではないのでノーコメント。
 最後にメインの裁判官が質問。「ひきこもりの者は元々社会関係が薄いわけで、
だから現実行為に走らないのでは?」「オタクとひきこもりは趣向的にかぶる所は多いが、
オタクはサークルなど内輪での交流は盛ん。=ではない。オタクは普通の社会生活をおくっているが
特段問題は起こしていない」先に89年の宮崎事件などの話もあったのですが、
あれは元々ペドファイルの者がアニメも好きだっただけ。オタクのネガティブイメージを
決定付ける物となったが90年以降徐々に復権しつつある。オタク人口は70年代以降
増加する一方だが日本全体の人口からすればマイノリティ。
 終わりに双方からの証拠物の申し出しがあり、弁護側からは現在の社会通念の裏付けとして
エロ漫画や同人誌、スーパーリアルの空山基の本などを提出。

 うーん、なんか斎藤先生さんの独壇場で裁判官も検察も正直ついてけない
というような印象だったかも。閉廷後の説明会先生さんの挨拶は
「はじまる前ビビって損した。相手が腰砕けで呆れちゃいました。
 一方で今回のは意味があったかも正直疑問。
 縁の無い人へ理解を求めるのは大変です。はじめから結論ありきな法廷の印象」
 次回は浮世の司法も現世に夏休みを求めてお盆進行な7/14(月)、被告弁護側の証人は
藤本由香里(編集者・日本マンガ学会理事)、奥平康弘(憲法学者。リベラル派の重鎮らしい)の
二人。次が7/30の被告貴志社長の最終弁論。

 7/12(土)に新宿のロフト・プラスワンで「松文館猥褻裁判とマンガ規制」と題した
トークイベントがあるらしいです。ゲストの半数以上は今日傍聴席にいました。
お酒の場のぶっちゃけ話が聞けそうですので、興味のある方はどうぞ。
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/schedule/lpo.cgi?year=2003&month=7

 私は行けたら行くかも。
雑談であったのですが、漫画を読める人って35%そこそこなそうな。
業界的には(私も)6、7割と思ってたそうですが、予想外に低い数字です。
何でもコマが追えないだとか…。なんか最近のアニメの手取り足取り説明しまくりで
結果、残る肝心の内容は薄っぺら感にも通じる話かも。
 ロフトの15日にはオーケンもいるよ、NHK「真剣十代しゃべり場」の常連だし、元気ですなぁ。



[50] ロフト・プラスワンへ行ってみた 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/13(Sun) 02:55  


 7/12(土)に新宿のロフト・プラスワン行われた「松文館猥褻裁判とマンガ規制」と題した
トークイベントを見物してきました。新宿歌舞伎町の雑居ビル地下2階。
チャージ(お通し)600円で喰いもん飲みもんが500〜1000円くらい
出演者のギャラは今晩の売上高次第とそういうトコ。

 前座に(大変失礼)児ポ法のお話し。出演者は山本夜羽、八的暁(共に漫画家)、
山口弁護士と連絡網AMIの三人とARCの平野裕二氏(児童虐待方面からの人)。
で児ポ法の現在。法務委員会か青少年特別委員会かは今は分からない、週明け分かるだろう。
最後の大詰めです、との事。
 で松文館裁判の方ですが、出演者は貴志元則(松文館社長)、宮台真司(社会学者)、
米沢嘉博(マンガ評論家)と山口弁護士、山本夜羽。飛び入りで次回の公判の被告側の証人
藤本由香里(日本マンガ学会理事)も。
 話はこの裁判の事情経過の説明ということで。私の傍聴記録(?)
http://www87.sakura.ne.jp/~cou/matu.htm
とかぶる様な事を色々。客は若い人が多かったですが、土曜の夜ですので
興味ある人が集まり、背広の人もチラホラ。漫画の一ファンから、
プロの漫画家、編集者などがいた感じ。60〜80人くらい?ほぼ満員。
 休憩をはさんで質問コーナー。
「自分は同人やってますけど、やっぱり世間の目が痛い。エロ漫画で表現の自由って
 開き直りすぎて、世には受け入れられないんじゃないか?」
 支援イベントでこんな質問する方もアレなんですが、この質問に会場大荒れ批難轟々。
マイノリティの自由を認めろっていうのに、この場では苛めかよ、なんだかなぁ…。
同じように感じた他の客からの彼を擁護する質問の和ませや、
宮台先生の面白い話で何とか場はおさまりました。
 規範意識は二重構造ってお話し。本音と建前っていうか…微妙に違うな。
例えば、エロ漫画は違法ですか? な質問に対して、
個人的にはどうでしょう? だと「俺的には、まぁいいんじゃないの」が7割。
世の中的には? だと「そりゃお天道様が認めちゃやっぱまずいでしょう」が7割。……うーん。
世の中、風潮、というものは、実際は個人が思ってるような物ではなく
案外、幻影かもって事かな。まぁこの幻が社会的秩序の一つでもあるのですが。
そしてマスコミが報道するのはオフレコに近い個心的なそれじゃなくて、世間としてはのそっちのものだけ。
 他に面白いネタは、日本の裁判に関わる、判事(裁判官)と検事って
掛け持ち(?)みたいな事出来るそうです。ある裁判では検察で起訴して
ある裁判では裁判官になって罪を裁く。残る弁護士と被告は蚊帳の外。
東京都だと更にこの検事に対してはこの裁判官みたいな馴れ合いが
結構あるようで、毎度変わるのは被告と弁護士だけ。
 後、今回の検挙の舞台裏。最初の投書が届けられたのが
警察OBの某大物政治家で、その人の鶴の一声とかメンツが立つ様にとかで、特段突出して
目立ってた訳でもない「蜜室」が突然の逮捕になったかもしれなくもないかもしれない…とか。
刑事裁判有罪判決率9割以上の現実は、冤罪がそれだけ少ないとも読めますが、
逆に警察の逮捕は絶対間違いがない警察検察主導国家であるとも読めます。
 他は出版大手五社(講談社、小学館、集英社、白泉社、秋田書店)は最近の様々な
表現規制の問題には、かなり及び腰とか。
取次ぎの売上至上を名目にした自主規制(あるジャンルは部数少なく取ったり)とかが
実態としてはある。消しの濃さは売上に直撃増減30%〜50%で、この事件で
最初は業界全体の自粛もあったが、半年過ぎた今は逆にチャンスと走ったりの乱世になりつつある。
この松文館の裁判は、その辺のチンピラの逮捕にまつわる裁判(?)なんかよりは、
大きいとは思ってたけど、テレビニュースを賑わす国政訴訟や大物有名人の裁判とは違って
所詮サブカルチャーの日陰者の小さな裁判と思ってたのですが、
そんな思いよりは大きな事。松文館もかなりお金を使ってる豪華な裁判で
著名な証人や朝日新聞などに取り上げられるのも、それだけの価値がある裁判だとか。

 で、関連の本を買ったり、連絡網AMIにカンパしたり、で 
まぁ色々あったけどそんな感じ。ひさしぶりに中ジョッキ5杯飲んで
寝むいんで、ビデオに録画したSEEDは明日見る。ガッシュ見れるように起きれるかな。

 次回の公判は明日(?)な7/14(月)も傍聴する予定。

[55] 裁判所へ行ってみた9-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/14(Mon) 21:51  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第8回公判を傍聴してきました。

 まず行き成り訂正とお詫びです。"裁判所へ行ってみた8-2"の
"次が7/30の被告貴志社長の最終弁論"は「貴志社長への最終質問」を
裁判の手順を知らなかった私の脳内誤変換でした。失礼しました。

 今回の被告側の証人は二人。一人目は憲法学者の大御所、奥平康弘
御歳74才。その証言ははっきり云って素人の私には全然分かりませんでした。
メモのA6の手帳も40ページはいつもの三倍ですが、理解出来なかった上に、
更にレポートにしようと大変主観的な視点が入ってる事を前に警告しておきます。
(いつもそうなのですが、今回は特に)
 傍聴席はその名声を表わすように過去最高。前半部で終わったのですが
その時にコミケのカタログの2〜3倍ありそうなハードカバー(六法全書?)を持って退出した人もチラホラ。

 その証言は憲法学。
 1950年起訴、最高裁判決57年のチャタレイ裁判。この際は175条は合憲を前程に
法解釈の問題で争そわれ、ワイセツを定義する三要件を残して有罪に終わりました。
50年代は公共の福祉の名の元に基本的人権が圧倒的に抑えられた時代。
それに疑問を感じた司法審査論が60年代初期に生まれます。その中の議論に
175条のワイセツを定義する法解釈の三要件。1に徒に性欲を興奮又は刺激せしめ
2に普通人の正常な性的羞恥心を害しに3に善良な性的道義観念に反する。
これは明治憲法時の内務省憲法局と同じ物。新聞法、出版法が廃止され
表現の自由が明記された現憲法においても影響されず、
そのままで判例とされました。明治の世は、庶民の倫理感覚の麻痺、堕落に
対して裁判所があるべき正しき道を示す。流動的な社会通念などは認めず
一律な正義が国にあったのが戦前の考えだと思っています。
それが今の世にも残り国が価値の合否を判断するという175条に対して
憲法学的にはそうじゃないおかしいとする。表現はメッセージ。受け取り方で千差万別の物。
 性行為は非公然であるもの、だから描写も非公然であるべきという
判例もあるが、それも違う。表現は物理的な力ではない、それは
天皇制の廃止を議論する事で反逆罪と言われた昔の考え方と同じだ。
更に本は個人的に読むもの。自室で読むのは当然非公然で
その表現をどう受け取ろうと個人の観念の世界で自由。
 愛のコリーダ裁判は社会通念は変わっていくものとされ無罪になったが、
個人的には議論が足りなかったと思う。許容を認めるということは
原理、原則がないことであり、そして社会通念を決めるのが
警察の取り締まり次第になってしまったから。たまたま見なかったことにされたらOK? 違うでしょ。
 社会的秩序の名の元に取締りが行われる歴史は公開議論が原則のアメリカがよく分かる。
70年代のベトナム反戦運動までは、民主主義国家秩序維持のなのもとに
個人の意見が圧殺されるという矛盾があった。日本では80年90年代になってやっと
フランス人権宣言「他人を害しない限りにおいては人は自由」の原点回帰が浮上してきた。
社会的に役立つかどうかだけで是非を問うべきではない。
 表現の自由を抑えるためには、社会(他人)に害している具体的な説明が必要である。
迷惑だからは理由にならない。不自由を強いる根拠は今だ最高裁でも出されていない。
書物が人に与える影響は受け手の極個人的な物。議論は深く社会全てを立証するのは不可能だ。
公害を比べるとよく分かる。データの検証が可能で具体的な害が発するから
個人(企業)の利益追求を公共の福祉の名の元に抑える事ができる。
 あー長い。この他、区分け(ゾーニング)は理にかなってるとか
共産党は昔アカと言われ絶対悪だったが今は違う世の中は変わるとか
数倍の色々な話しがあったのよ。
でもどれも結局は表現の自由を判断するには議論が必要である。
議論中の灰色で黒じゃないから法や国家権力でリベラル議論が縛られるべきではない。
世の中の主流、民主主義の多数派の名の元に圧殺されるものなら、
態々憲法に書かない。表現の自由は少数の自由を守る為に明記されてるのだ。
 抽象的な憲法論が続く中、山口弁護士が「今回の件は警察の一警部補の○×氏の独断…」
で検察の「異議あり。今日提出されたこちらの調書ですが採用に同意できません」
具体的な警察権力への話しの展開に逃げたのか裁判長自らが話を振り
山口弁護士も食い下がりましたが、その調書を証拠物として認めないことにされてしまいました。
「ではこの事件ではなく一般論として独断で運用されたとしたらどうでしょう?」とちょっとぼかした
話で繋ぎ、それはやはりおかしい。道徳を支配する明治のそれと変わりなく、
今の役人もマニュアルを作って真面目に餞別してるのでしょうが、それでも
その国家の選別行為に対して疑問を抱くのが憲法学者。

 だから、175条は違憲とならざるえないと考えます

 検察側の反対質問は「蜜室読みました?」
「今のご時世はこういう物なんですねぇ」「いやらしいと思いましたか?」
「個人的な感想では客観的なそんな印象を持つだけですよ」
検察の「この本はある父親の投書により…」で弁護士側からの「異議あり」の仕返し。
「その投書は証拠物として提出されてません」裁判長「異議を認めます」
「大人の判断が基準で子供は関係ないとおっしゃいましたが彼らに渡ったらどうでしょう?」
「また貸しは受け取り側の自由。元々頒布側の問題ではないし、
誰もが子供へ見せたがると前提して、大人への頒布を禁じるのはおかしい」
 終わりに飄々と「はい、どうも」と2時間以上を息も切らせず元気に喋りたおして退出。

 私が前振りで云ったことは、情報ってのは最後は受け手が考え選別し判定するもの。
たった一つの本を見た人も千差万別の感想を抱きます。そんな私の主観が一次に
通った関連のこのレポートだけで全てを見たような勘違いは決してしないで下さいって話。
私のとは比べ物にならないほど精巧なレポートを公開してるリンク先もありますが、そこさえも。
それだけではありません。テレビニュース、新聞、週刊誌、全てのマスコミさえも。
伝聞の情報はバイアスがかかってます。その中で本当にあるかどうかも分かりませんが、
そのあるかもしれない真実とやらに近付くための手段は一つ、多様な情報を見比べる事。
それが受け手としてのメディアリテラシーだし自己責任で吟味するその判断に価値をおいている
発信側の表現の自由です。ですから一律な価値観で表現は規制されてはいけないって話。
でなんか丁度かぶったでしょ。

 そんな大変私的なレポートですが、これも多様な視点のうちの一つということで
参考になればと公開しています。



[56] 裁判所へ行ってみた9-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/14(Mon) 21:51  


 二人目の証人は藤本由香里(編集者・日本マンガ学会理事)。編集業は一般誌ですが、
女性のセクシャリティを話題にした自身の各種の著書も出されています。編集したという
中島梓(栗本薫)「コミュニケーション不全症候群」は私も読んだ事ありました。
女性の性にポルノの話は必要不可欠。レディースコミックや男性向けエロ漫画にも深い知識が。

 証言は「蜜室」の読書感想文。単行本は短編収録の全9話。一話一話の
あらすじと感想を述べていきます。私自身は「蜜室」は現場で斜め読みさせてもらっただけで
よく知らないのですが、その証言は男性向けのものは性交とシチュエーションだけで
ストーリーが希薄なのが多数だが、比べて「蜜室」は作品として
二転三転なストーリ、様々な構図な絵らが巧みで丁寧に描かれた優れた物である。
そのテーマは、感想として著者のエロスの根幹には、
女性の心も体も開いた、男女相互の快楽、和姦を大変尊重しているように読める。
拉致監禁、強姦、輪姦といった最終の8、9話でさえ(他は全部和姦物ね)、一女性として
その描写は大変痛いものだが、その状況にも屈しなかったヒロインが唯一身体を開くのは
彼女を人として庇ってくれた下っ端のさえない男の子だけ。そのコントラストが演出。
 後にある検察の質問の消しの意味にたいしても、女性器の緻密な描写は心の開き具合の
バロメーターとして意識して開かれたり、萎縮させたりと区別している。悪戯な煽りではない。
 ポルノの基本として、ありえないような過激な刺激と、経験体験の回帰の二つがあるが
「蜜室」は後者を軸として相互に感じあう快楽を表現している。
女性視点で見ても「蜜室」は男性優位な本じゃないよって話。
 そして「この摘発には大変危惧を感じています」今や漫画は世界から注目される
日本の誇るべき文化。なぜ日本の漫画は国際競争に強いのか?
底辺が広く層が厚いから、玉石混合こそその文化の力。以前はアメリカが
コミック先進国だったが1955年のコミックポルノ規制で漫画は子供の為の物と定義され、
大人向けの表現は子供にはキツイと全て規制されたことが日本に抜かれた失速の大きな原因ではないか。
現在日本の漫画市場は半数が18歳以上。これは18禁アダルトポルノというだけではなく、
青年誌などの大人も楽しめる漫画があり、その多様性こそが力である。
漫画は子供のものという誤った思い込みによっておかしなことにならなければいいと思っている。

 今日は三人でしたが検察の質問はいつもの一人だけ。漫画に対する質問が主ですが、
「喘ぎ声や擬音は必要か?」「リアルな描写は必要か?」「読者の性欲を刺激するのはどうか?」
「虐待描写は必要?痛そうじゃない?」って漫画という表現を根本から否定するような質問ばかり。
当然全て必要性があることで、それが表現ですが答え。ボカシに関しては
個人的には必要ないと思ってる。一般にも無修正の同じ漫画や浮世絵が出回ってるご時世です。
 裁判長の質問がどういったものか忘れてしまったのですが、それに対しては表現の規制というものの
根幹を主張。「蜜室」より、より過激なものであろうと、即処罰の対象にするべきではない。
不道徳はガス抜き必要悪でもあるし、そもそも発禁をされてしまったら
それを批判する良し悪しを考える議論の場さえ奪われてしまう事になるから
刑法による規制の対象へはよほど深く広い議論が必要である。

 閉廷後の説明会。憲法学者の先生は高齢なのと出番が早く終わったので帰ってしまい藤本氏だけ同席。
「色々緊張しましたが、大きな間違えはしなかったと思います。お役に立てれば光栄に思います」
傍聴席のコミケの米沢代表の感想は「「蜜室」でホントよかったわ」
いや、物の良し悪しで差別するわけじゃないのですけどね、やっぱり。
後個人的なアレですが、法廷という四角四面の場所で女性が性を熱く語る
シチュエーションはエロいっす。官能小説女性朗読フェチじゃないのですが…。セクハラ発言ごめん。
 憲法学者の重鎮先生の方は最初は重い腰だったそうですが、話を進めるにつれ乗ってくれて
本番の法廷では予想以上に意欲的な発言をして下さいました。この裁判に
憲法、基本的人権、表現の自由はやはり外せない題材です。 
民主主義や国の為にではなく個人のためにあるものが基本的人権。
それへの侵害規制による弊害は論じ尽くしました。対するその規制する理由根拠、その害悪は
検察側は何一つ立証してないのが現在である。
 次回は7/30ですが、前半部に検察と争そった警部補の調書の話。むこうにしては薮蛇というか
弁護士が頑張って話がトントンと転がって、次回その警部補を証人として呼ぶ事を約束させたので、
被告弁護側最後の証人は「蜜室」をワイセツ物だと摘発を指示した責任者になりました。
その後、被告貴志社長への最終質問。次は二ヵ月後の9/26を
論告求刑の予定として11/4が最終弁論。判決はいつかは分かりませんが年明けに
なりそうじゃないかと言う話。7/30以降は予定ですのであしからず。

[81] 裁判所へ行ってみた10-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/30(Wed) 21:41  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第9回公判を傍聴してきました。

 最終尋問のせいか、夏休みのせいか、その前の証人の警察の警部補のせいなのか、
傍聴人はかなり多め、顔ぶれもはじめて見る人が半分くらいいたかも。
警察の関係者や出版業界の関係者もかなりいた模様。初めて用意された
プレス(報道)席は3座席も1つしか埋まらず。

 はじめはこの裁判の最後の証人、警視庁生活安全部保安課の真庭警部補。
国士舘大卒で機動隊の経験も、ワイセツ風紀担当は7年、バリバリの警察体育会系コースの人。
組織に忠実な黙秘権(?)な証言拒否でしらばっくれると思ってた被告弁護士側ですが
予想を遥かに越える警察内の摘発にいたる状況証言となりました。

 事の発端は一枚の市民からの投書でのっけから爆弾発言。
その投書が届けられたのが警察庁保安課OBの大物代議士の
平沢勝栄だったと実名を証言します。その代議士から雑誌「姫盗人」が
けしからんという投書と同封されたビューティーヘアの「相思相愛」の部分のコピーが
警視庁保安課に届けられたと言います。同じ頃に匿名の一般市民からの電話もあり
この二つの情報から警察は動き始めました。重視したのは投書の方。
 8/26。その前日に買った4冊の成人コミック。ビューティヘアの
「家出娘調教」平成12年5/25発行(消しは100%濃度の白消し)、
「乱交調教」平成13年3/25発行(トーンでの網消し)、「蜜室」平成14年5/15発行(トーンでの網消し)
そして忘れたというもう一冊の本を対象に、具体的な基準が書かれていないと言う
"ワイセツ事犯取り締まり要綱"に従って、風紀一課で検討会が開かれました。
人数は10人くらい、参考資料に15〜20冊の他社の成人コミックを用意し、一時間を越え半日以内の
短い協議。その検討はビューティヘアの漫画の物語ストーリーは読む気もないし、
読む時間もない。漫画のそれは初なので実写の写真と同じく、性器が見えるか見えないか
「これはひどい、あからさまだ」などの意見で全会一致し、即日のうちに
恣意的な検討がなされないようについたという立会人は真庭警部補のその上司、
「チャタレイ夫人」の有罪判決、個々の表現ではなく全体の文脈を読んで有罪とされた
翻訳本マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」もしらないという真庭警部補、
その二人の名前で「蜜室」をワイセツ物と認定する調書は作成されました。
同じ作者の同じ消しの「乱交調教」がワイセツ物じゃなくて「蜜室」だけが
ワイセツ物なのかは大いなる謎。
 おまけで態々「蜜室」にストーリー性はあったか?と聞く検察も謎。成人コミックを初めて見た
個人的な感想は「驚いた、こんなに酷いとは」と検討が満場一致で簡単に決まったというのに
満足の笑みを浮かべる検察官です
(これも分かりやすいですが、ぞんざいな議論という証拠にもなると思うんですけどね)。
 その後に、マスコミ報道にもあった有識者の意見。これは東京地裁の検事や、
弁護士、刑法学者に、実写小説ではない漫画での逮捕は初という事で、そのお墨付きを貰うために
警察内の検討の後、がさ入れの前に真庭警部補の上司が連絡を取ったといいますが、
相手が誰で、どんな意見だったのかは分からず。正式な意見書とした書類も残っていません。
 その後、9/19の任意同行の取り調べ、10/1の逮捕となりました。

[82] 裁判所へ行ってみた10-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/07/30(Wed) 21:42  


 10分の休憩をはさみ被告貴志社長への最終質問。
今までの半年を通じた東京地裁の一審の最後の証言となり、トータル的な補填に。
 一つ目は、元漫画家である信念を披露。「ゴルゴ13」のさいとうたかをのアシスタントを
したことがある貴志被告は、元々エロ漫画を出していた松文館を引き取ります。
それまでエロは描いた事はなく、2、3ヶ月猛勉強してエロ漫画の魅力を見つける。
スポーツやアクション物の様に大胆なコマ割で動きがよく、読みやすい事。
エロという特定の読書がいて取り敢えずの食い扶持は稼げる。
しかしまた特定の読者との距離が近いエロ漫画は上限が限られている。
底辺は広いが先の見える世界だが、単行本3、40万部のエロ漫画家、森山搭が
別ペンネームの山本直樹で100万部のメジャー誌で成功したことに、
新人を広く受け入れ、育て上げ、それぞれの望む方向に伸びていくのが現在社長、発行人、編集者として
何よりも楽しいと思っている。当時は漫画原稿の片手間に出来るフリーターのようなバイトも
素人が行き成り挑戦できる同人誌などもない時代であった。
 そしてやっぱり分かりやすい消しの話。5、6年前の浮世絵の春画の無修正の発刊と
30社ほどの新規参入の会社で、消しの度合いはそれまでの100%黒ベタ、白ベタから
透過出来る網のトーンへ、そして無修正までに激化する。その中であっても
あまり経営は得意でないという社長の松文館は、最大40%の消しまでで
終始抑えていた。
 カラーは100%の白消し。これは美術を学んだ社長の持論。
「警官も検察も「蜜室」はリアルだというが頭がおかしい」絵描きの視点から見れば
輪郭線が描かれた漫画というものはどう見えようとディフォルメである。
(ただの円の線を球と出来るのが漫画。リアルな球体は正確な光の陰影の表現が必要)
芸術作品となるほどになると、人を描くのに骨から描く。レオナルド・ダ・ビンチは
モナリザなどを描くのに人体の解剖までしたものだ。一方
「写真は素人でも被写体かあれば誰でも写せる。(だから真を写す)
 漫画絵は作家のイメージなんだ。リアルな絵でも写実的でもない。
 頭の中から作るものなんだ。そしてそのものではない絵から
 読者がイメージを連想するのが漫画だ」美術畑の漫画家としての叫びでした。
 カラーの話に戻ると、色は二次元作品をを表現する明度、彩度、色相の3つの要素。
白黒の明度のみの一つだけに対して、カラーは三要素全ての表現。
視覚的にリアルに近くなるので、無修正の写真が違法とされるのは正しいと思ってる
社長はモノクロとカラーの間に差異をおくという。
 そして、事件の経過。10/1の逮捕後、二週間後の10/16抵抗の拘留理由開示判の後の
警察の逆鱗の取調べで「蜜室」をワイセツ物だと認めた。
社長と編集長、頭を拘留されたこの頃の会社は明日にでも倒産寸前。
一刻も早く出たかった。しかし10/19に弁護士から聞いた
松文館専務でもある奥さんの伝言。
「会社の事はいいから、自分の好きなようになさりなさい」
拘留期限の最後の日に貴志社長は「蜜室」はワイセツ物と認めた証言を撤回しました。
10/22、土壇場で抵抗した貴志社長は検察に起訴されます。漫画人として
「絵描きを護らなければいけないと思った。アメリカでは大人向けのコミックは
 法によって規制され、一つの文化が潰されたという最悪の例がある。
 私は闘って、勝たないと…」
検察は怒り、追起訴の証拠集めを理由(ただの難癖、追起訴は無かった)に
弁護士の保釈申請を却下し、起訴から22日間、さらに拘留され続けました。
「表現の規制というものは漫画家にとって頭の半分を縛られ、
 その心のうちに土足で踏み入れられるようなものだ」
 このあたりは、かなり感情か昂ぶり、質問への答えがずれたり
暴言への裁判長の「言葉を慎みなさい」。涙に声を鼻につまらせる部分もありました。
 
 他には、漫画の消しは不要と思っているがそれでも、基準が曖昧なので
多くなってしまった社員のために危ない橋は渡らなかった(のに、何故?)。
青少年への配布は18禁マークや、出版社持ちの小売本屋への棚プレートや
ビニールパッケージなどの自主規制のゾーニングを努力。
「蜜室」はおかずのエロだけではない、いい漫画なんだ(のに、何故?)。
 最後に裁判長から一つの質問。「逮捕後の社の方針は?」
「現在は白い消しにしてる。それは取締りの判断基準が分からないからだ」
検察の論告求刑を9/26、被告の最終弁論を11/4と指定して閉廷。
 同じ罪状で罪を認める略式を飲んだ松文館編集長と漫画家ビューティヘアの名誉のために補足。
お二人とも今までの全ての公判に一傍聴者として同席しています。

 終わった後の弁護士の説明会は
 「びっくりの予想外。
 今度近くの派出所で真庭(元)警部補を見かけたら笑顔で挨拶ね。
 三人の有識者と言うなら、こっちの証人先生は五人で勝ち」
ここまで内情を語ったり、国会議員平沢勝栄をはじめ
上司や課長など個人名を証言するとは思ってもいなかった。
パッと見でエロ(グロ)いな感情論の結論が先にありきな
杜撰なワイセツ認定の検討であったことが暴露されました。
 保安課7年で初めてのエロ漫画にビックリとの話しでしたが、出版業界関係者の話しでは
地方自治体の青少年育成条例の関係で警察内でも漫画は決して珍しくなく、
多数の雑誌が指導や罰金を喰らっているそうな。
逮捕やましてや裁判までのは今回が初ですが。

 論告求刑は定型の文にちょっとした今回の裁判過程の内容が添えられるもの。
それに求める量刑が記載されるらしいです。最終弁論はもう証言証拠じゃないようですね。
求刑を受け、被告が裁判官へ意見を述べる場を最後で、
以後時間を置き一審の判決が下されます。
 判断材料は今までレポしてきた証人の発言と、傍聴席には見えない提出された証拠物。
被告弁護側は上記のように様々な論を展開しました。対峙する検察側は、
ただ「蜜室」を販売して逮捕されたという事実を立証しただけ、
なぜ「蜜室」がワイセツ物なのかはほとんど論せずに終わりました。
 唯一頑張ってる消しの薄さも同様やそれ以上の他社が、合法で
出回ってる中の「蜜室」の違法の罪を、以上の証拠を元に
有罪無罪その重さを裁判官が下します。
 「根拠もなくワイセツだからワイセツ」と有罪を判決されたら
司法の場に証言議論(?)の場は不要ですね。というか、
法の適用の正誤を裁くのが刑事裁判の法廷で、概念議論するのは司法の本来の役目じゃないか。
そんな法律の刑法175条です。



 松文館裁判の"はじまりの投書"の文章内容は原文のままの転載が
児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委内コンテンツ「松文館裁判」で公開されています。
「児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委」
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/index.html


[162] 裁判所へ行ってみた11 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/09/26(Fri) 20:26  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第10回公判を傍聴してきました。

 人は今日も多かったですね。論告求刑ともありマスコミ報道席は
10(3社来てた)確保され、傍聴席は39席しかなかったのですが入場できました。
ですが法廷はわずか3分。検察が3ページの論告書をそのまま読んで求刑を告げ、
次回の日時を裁判長が指定して終了。

 論告要旨は公開資料なので全文をこちらで公開しています。
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun0926.html

 出来ればそちらを一読してほしいのですが、いつものような私視点な概要あらましにすると
検察として証拠は十分立証した。しかし被告は「蜜室」のワイセツ性を否定している。
それに対する検察の意見として展開します。
 「蜜室」は全編144Pから8点の短編で構成されているが、性器、性戯、性交の描写
部分が全体のほぼ3分の2を占めており、その分量と構成からしてもr蜜室」が性行為の描写自体を
目的としていることはあまりにも明らかである。その内容は口淫など様々な体位や
男女の表情、姿態の変化、性器の模様、発生音に至るまで極めて大胆かつ写実的で
克明に描写されている。中でも「相思相愛」内では暴力を振るい催淫剤を使用。
「這いずりまわる」では陵辱輪姦。これらを扇情的に生々しく露骨に描写し、ここでは女性が
完全に男性の性的快楽の玩具、物として扱われている。
 性器の修正部分は網掛けを持ってなされているが、程度が薄く透けて見えるため
かえってチラリズムを煽る。
 このように「蜜室」は性行為を興味本位に取り上げ、もっぱら読者の好色的興味に訴えるものと
見られるので、過去の判例の三要件、徒に性欲を刺激興奮させ、普通人の正常な羞恥心を害し
善良な道徳観念に反する、に該当する。

 被告は「蜜室」がワイセツ図画に当たる認識はなかったと言うが、上記のように
「蜜室」のワイセツ性は一見して明らかであり、被告の弁は到底信じがたい。
のみならず消しの度合いを50%から40%へ薄くするよう指示も行っていたのだ。

 被告弁護側は社会の性解放の風潮が進み、ワイセツ概念が変わっていき
「蜜室」は現在その中では特段突出したものではないと主張するが、弁護側提出証拠の
他社の成人コミックを見る限りワイセツ性は「蜜室」と比べて相当劣っている。
 当局の摘発のありなしだけでワイセツ性のありなしが図られるものでは全くないので
世の中の現状とワイセツを判断する基準となる社会通念が一致しないのは当然である。
 「蜜室」は芸術、思想性もなく2万544冊を頒布し977万円の利益を会社に上げたものであり
犯行による収益も多額である。これまでも同様な漫画を数多く出版している。職業的常習的犯行である
ことは明らかであり、その動機も利益追求のためで短絡的かつ利欲的であり、酌量の余地はない。
さらに被告は憲法を頂点とする現行法秩序を無視した態度に終始し、取り締まり当局を非難すること
多々で、自らの態度を反省する様子は全く見受けられず、改悛の情は皆無である。
 またこのような漫画が多くの青少年を害する事は自明であり、「蜜室」に性欲を刺激され
その発露を性犯罪に求めかねないのだ。弁護側は18禁販売を主張しているが
それがどの程度徹底してるかは定かではないし、又貸しで渡ったらどうするのよ。

 よって、貴志被告に懲役1年を求刑する。

 と、まぁこんな感じですか。
閉廷後の説明会では175条の最高刑は懲役2年、裏ビデオとかでよく出てるそうです。
強気な文面の割にはそこだけ弱気。中身もはっきり言って今までの裁判の流れを無視した
立証無しの主張。フェミニズムとか青少年とか関係ないこと出てるし、どこがワイセツで社会に
有害なのかをこちらが学者先生を証人に立てて無害だと立証してるのに対して、
検察は何もせず自明であると言い切ってたりの、法廷経過無視の机上の空論だろう。
消しがあるからエロくて煽るとか言ってるし、警察の取調べとか区分けを徹底する青少年健全育成条例に
矛盾してることを過剰な装飾語でヒッチャカメッチャカに詰め込んだ感じ。
相変わらずの又貸しは?だし、自販機まである酒やタバコはどうなのよ。
「これが今の検察の実情だとは…一納税者として独断であると思いたい」山口弁護士でした。
 ただ今まで、あちらからはほとんど話題に出してこなかったどういうものが、向こうの主張する
ワイセツ物なのかをやたら無闇に色々と述べてくれたんで、ある意味次回はマジ突っ込みで
論破して裁判長の心象を上げるチャンスかも。
次回法廷は11/4 10:00からで論告に対する反論の弁護士の最終弁論と
被告の意見陳述があり、結審に移ります。判決はいつか分からない、やっぱり来年くらいかも、だとか。
 こんな極悪人みたいなデタラメな論告は到底飲めないし、ワイセツのガイドラインも作れてないし
戦いの行方、反撃はこれからです。
「新文化」
http://www.shinbunka.co.jp/
 今日の速報と「取材ノート」の#035でも松文館裁判を特集しています。

[227] 裁判所へ行ってみた12-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/11/04(Tue) 18:54  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第11回公判を傍聴してきました。

 連休明けの平日朝10時よりの法廷は人少ないっす。2割くらい空席?
最終弁論ということでマスコミ席は10ありましたが、共同通信とどこかの2社のみ。
判決の時はカメラ取材とかあるのかなぁ、地裁じゃないかな。

 最初に検察の論告の一部(マスコミ等を通じて煽ったとか)に対する証拠立証不在を
理由に削除を希望したのですが「検察の見方でしょ」の一言で弁護士の要望を棄却。
ただいちゃモンを付ける事で納得していないと法廷記録には残る事に。
 で弁護士の最終弁論。というわけで今までの弁護のおさらいでした。

 大西弁護士が憲法論。刑法175条はより上位の憲法21条(表現の自由)、
31条(法律の定める手続きによらなければ刑罰はかせられない)に違反する。
「蜜室」は成人コミックであり青少年への影響は刑法175条の定める保護法益に値しない。
憲法21条はエロの自由も保障している。それへの規制は思想の自由という大きな人権侵害に
なり、それを断行するのなら具体的な保護法益の説明が必要である。国が道徳を律する事は
近代法の大前提への侵害である。価値観、思想は自由であり、平和でインフラが整備された
現代日本においてそれは多様化しており、具体的な侵害がないかぎり自由である。
道徳とは多数派の価値観の押し付け、法の問題ではない。憲法に示す表現の自由とは
マイノリティーの自由を認めている事に他ならないのだ。
 刑法175条の立法目的も明治の中央集権国家建設に起因し、
ワイセツな文章図画が社会を混乱させるという現在の科学的根拠は無い。
いわゆるメディアの悪影響とは科学的根拠が無く俗信の域を出ない。
 地方自治体の条例の青少年環境健全育成法でゾーニングは既に行われており、
175条の行使は必要最低限とさえ言えるものではない。尚、性欲とは衣食住に等しいほど
大切な権利。基本的に見たくないという不快感の権利より勝るものである。
 175条は国民の知る権利に反する。ワイセツとは国民の社会通念を持って判断すべき
だが、それが不可能になるからだ。一度行使(見れなくなると)されるとその判断の是非を
国民が判断できなくなる。刑法としてはあいまいなものであり、現在はチャタレイの
三要件をワイセツの定義としているが、本来その3つが合致した場合にのみ適用されるはずが
過去の有罪判決はその3つがどこに具体的に当てはまったかを示していず、ただのお飾りと化している。
 今回はその運用でも憲法31条に違反する。摘発を指示した警察はワイセツと判断したが
被告弁護側の証人の様に有識者の反対もある。漫画の初の摘発としてはあまりに慎重さが欠ける
警察組織内の検討会であり、法廷で判決が出る以前の現在、既に行われた、
同一作者の著作の押収に至っては発禁ですらある。
 よって、刑法175条は憲法21条、31条に違憲であり、それを一歩譲ったとしても
本件の運用で憲法21条、31条に反しているものである。よって被告は無罪である。

 山口弁護士がワイセツ論。検察の論告は「四畳半襖の下張」裁判の
論告のパクリで今回の裁判を見ていない。ワイセツを定義する社会通念とは
常に変わるものであるが、検察はそれに対して何の立証もしていない。
刑法175条が公共の福祉を理由にギリギリで合憲だとしても、運用すべきは
現行の社会通念の中で極めて突出し、普通人の理性や良識を麻痺させ社会に害悪を
なすものだけが当てはまるのであろう。
弁護側は社会通念の寛容さの広がりを各証言で立証し、更に過去の判決でも
時代と共に寛容になっている。そもそも四畳半〜は文章であり、それが
そのまま漫画に当てはまるわけが無い。更に検察は「浮世の司法の判断は社会通念と違って上等」
とまで開き直っているが、その自論の証明もしていない。子供へのまた貸しを
危惧すると度々言っているが、それでは全ての文化を子供のレベルまで落とすべきなのか?
タバコは? 酒は? 非常識であろう。青少年は成長期に辺り個人差も大きく
国が口を出すことじゃない。誰よりも知っている親が見るべきものだろう。
 漫画は写実的リアルなどではなく極めて恣意的であり、だから作品であり作家性なのだ。
その作家のイメージを読み取る鍛錬をしなければ分かるものではない。それを証拠に
音も色も無い白黒の作家独自の世界である漫画は、実写よりワイセツ性が低いと皆が
口を揃えて証言している。それを読める人は国民の全体数では普通人ではないオタク。
 いやらしいもエロ本も合法である。量の過多が問題でもなく検察が「蜜室」はワイセツだと
主張する薄消しの下半身を削っても伝わるテーマ、ストーリーがある立派な作品だ。
性欲のみを興味本位に煽ったものではない。よって被告は無罪である。

 最後は刑法論、望月弁護士。「被告人に故意は無い」
刑法38条 故意犯処罰の原則(罪を犯す意識が無い行為は罰しない、ただし法律に
特別の規定があるものは例外)に反する。学説では最高裁のチャタレイ有罪判決にも
批判的だ。映画「黒い雪」裁判では映倫を通った事実後で被告人の故意が無かったと認め
無罪となっている。「蜜室」は合法として流通されている他社と比べて
さらに控えめの業界5、6位の網消しの濃度。
裏ビデオや裏本などのように違法を売りにはしていない。

 締めでリーダーの山口弁護士が一言。
「この裁判は21世紀の表現裁判。司法は
 ぜひとも正面から真剣に対処して欲しいと願っています」

[228] 裁判所へ行ってみた12-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2003/11/04(Tue) 18:56  

 大ラスは貴志被告の最後の意見陳述。
最終質問の時とは違って一分ほどの簡潔なものに。
「この裁判の過程でワイセツ図画に対するガイドラインが
 出来ればと思っていましたが検察側の立証は無く、今だに分かりません。
 これからも警察、検察の勝手なのでしょうか。
 社会主義国家でなく自由な国、日本。是非とも良識ある判決を望みます」

 以上で東京地裁の一審は全て終了。

 前回の検察の論告求刑と同じく、弁護士の最終弁論も
「児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委」
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/index.html
こちらで正式なのを公開する手筈になってるようです。

 弁護士トリオ勢ぞろい(毎回三人いましたよ。一言も喋らない時もあったけど)の
最終弁論は今までの法廷のまとめと検察の論告に対する反論。
そして中々世間的に難しいというか恥ずかしいというか(?)の無罪へのヒントなどを
裁判長に教えてあげる形などで終わりました。警察検察の逮捕という行為を不当だとする
この様々な主張或いは問いに対する答えは、
来年2004年の1/13(火)午前10時より同じ東京地方裁判所528号法廷を指定された
裁判官の判決です。裁判官は中谷雄二郎裁判長、横山泰造、中村光一の三人なのかな。

 まだ地方裁判所の一審ですので勝っても負けてもいちゃモンつけ(れ)ば、
証人は呼ばず一審の証拠調書や証言記録のみを参考にした裁判の再検討、
証人も被告人さえもいない書類のみの法廷が、高等裁判所で二審として始まります。
最下位の一審では大きな問題の憲法解釈などはスルー(合憲が前提)が
常識のようですが、それでも出したのは後からじゃ、「前に言わなかったじゃん」と
却下されてしまうから。ですから地方裁ですが、今まで皆勤賞でレポしてきた
双方の議論の展開はこの表現裁判のかなりの要素を網羅しているようです。

 一年間の今まで付き合ってくれた方、或いはここまで読んでくれた方、
ありがとうございました。判決は来年ですが、この審議の議論は
私にとっては色々考えさせられ為になるものでした。皆さんはどうでしょうか?
 ってまぁ私はただ聞いてただけで、偉いのは周囲の猛反対を押し切り
裁判に迎え立った松文館貴志社長と、心強くサポートしたとりまく弁護団の
皆さんです。取りあえず一仕事終わり、後は万事を尽くした天命を待つのみ。
お疲れ様でした。

 閉廷後の説明会と最後(?)ということでの食事会では
最終弁論の内容は計50P、約束の2時間枠に収めるのに一苦労とか、
社長も色々言いたい事もあったけど削った、張本人はシンプルが一番。
175条は字面そのままで乱用されたら間違いなく違憲だろう。憲法9条や
毎回の法廷前の判事(裁判官)と検事(検察官)の挨拶も癒着だろ
な色々難しいのが現実の世の中です。判決が冬休み前の12/20とか言ったら
その短時間の浅慮な判定の裁判官の前で暴れてやろうかと思ったと言うのは
巨人の阿部捕手によく似た顔のいつもクールな望月弁護士でした。

 これとは話が違うけど、今週末11/9(日)は第43回衆議院議員総選挙。
投票率はだいたい6割から7割というけど、その外の行かない人3割、
逆にチャンスです。その人達の一票で日本は変わります。
うちに来るような人はその手の人多そうだけど、
みなさん選挙へ行きましょう。


[417] 裁判所へ行ってみた13-1 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/01/13(Tue) 18:06  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の第12回、一審判決公判を傍聴してきました。

 報道席は15席、12社が来てました。開廷前にTVカメラの撮影があり、
開始1分、判決直後に速報性を求めて大半が退出。一時間半もの判決理由を
最後まで聞いてたのは一社のみでしたが、閉廷後の記者クラブやその後の私も同席した
記者会見などで把握した模様。傍聴席は満席でした。

 一審判決、求刑通り懲役一年、執行猶予三年の有罪。

 東京地裁、中谷雄二郎裁判長。

 以下は傍聴した判決理由です。後日正式なものをこちらで
公開する手はずになっています。
「児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委」
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/index.html

 憲法学者奥平証人は違憲と言うが、
刑法175条は憲法21条表現の自由、31条(罪刑法定主義や故意の可否)に反しない合憲である。
その保護法益は社会の性的秩序を守り、健全な性道徳の維持。
近年はネットの普及などで性表現が過激化、氾濫しており、それは性的秩序に脅威となっている。
その為我が国はサイバー条約にも加盟し175条をネットのデータにも拡張する方向である。
175条による違法犯罪の件数は昭和58年に2380人、近年の平成10年には529人有罪と
減少はしているが、その検挙は当然として国民に認められている。
当局の摘発を免れているから、認められているという被告の主張はとんでもない。
性風俗が乱れると、強姦、強制ワイセツ、売春、青少年の健全育成など等、悪影響がある。
保護法益である性的秩序の維持は間接的に性犯罪の抑止となっている。
これは国家の道徳の押し付けではなく、社会的合意であり、
国民の基本的人権を守るものである。
 社会学者宮台証人は表現の影響に科学的根拠はないと証言し、
逆に近年、青少年の性犯罪は減っていると言うが、成年も含めると全く逆で
昭和61年の2682人、平成7年5744件、平成14年には1万3千件までに激増しているのだ。
性表現の氾濫とこの傾向は容易に推測でき、抑えることは緊急課題である。
 175条が表現の自由に一定の規制をかすのは、最高裁判決に準ずる。
弁護人の独自の論理で175条の保護法益を"見たくない権利"に。それは区分陳列
ゾーニングの実施ですでになされていると言う。寛容な欧州などにはこの解釈もあるので
それも一理あるかもしれない。だが我が国の裁判では無関係だ。
娯楽の対象として求められている現状だが、抑えてよい。そうすると国民間での
議論の余地も無くなると言うが、それは裁判所の法解釈の問題なので当然であり構わない。
警察当局の審査会も短時間とはいえ議論があった、捜査方法にも問題は全く無い。

 ワイセツ物の定義が漠然としていると被告は主張するが、チャタレイ最高裁判決の
三要件。普通の人の羞恥心を害すること、性欲の興奮刺激を来すこと、
善良な性的道義観念に反すること。に適用するか否かで明らかである。
「蜜室」は144Pの86%が性戯、性交場面に終始し、その表現も露骨かつ詳細で
性器の表現も1コマで焦点を当てられたりと強調されている。漫画は写真と比べて恣意的な
ディフォルメがなされているが、やり方しだいでは緩和も強調も可能である。
文章と比べると絵の力は大きい。更に「蜜室」は証拠物として提出された他の漫画と比べても
ディフォルメが弱く、情緒や官能にうったえる迫真性や性的刺激が強い。
 性器に消しがあるがカラーの白抜きも部位を連想させ、モノクロの網掛け40%は
非常に薄く箇所も小さく修正の意味をなしていない。
作品テーマにエロチシズムとマンガ界理事藤本由香里証人は言うが、
物語は性交への導入にすぎず、読者の好色的興味を煽ることに終始しており、
作者ビューティーヘア自身も成人雑誌でいやらしく描いていると証言しており、
芸術性が無いのは明らかである。
逆に物語をつけることで一枚絵より臨場感を高め、性的刺激を高めている。

 被告は創作の萎縮を防ぐ為に社会通念の変化を明確化させよと言うが、
社会通念の変化は性表現の氾濫で一般としては確かにある。
だが性道徳を判断する健全な社会通念とは、そういったものではなく、
裁判所の判断であるべきである。
 漫画単行本は初、雑誌掲載時の摘発はなく後日の単行本化の時というが、
平成12年の雑誌発行当時はその手の漫画が氾濫の兆しを見始めている。
これは当局の放置ではなく同時期に増加した凶悪犯罪の増大による捜査で
暇がなかったからである。単行本の摘発は迅速かつ適切であった。
刑法学者園田証人は「蜜室」がワイセツ物にはあたらず、有害図書止まりだと証言したが
これは青少年育成条例審議会の専門家になることで感覚が麻痺しており、
「蜜室」がワイセツ物であるのは常識人であれば自明の理である。
 被告の故意について。175条は頒布の認識さえあれば十分で
その事実は検察の立証や被告も認めている。他の出版社と見比べ、
無修正の他社にたいして表現を控えめにしたと言うが、これも所轄官庁などの公的機関に
問い合わせをして確認すべきであり、おこたった被告は誤認してもある意味当然だが
故意が無かった、という理由にはならない。
 被告は会社社長の責任者であり970万という多額の利益を得て、売れないからと
50%から40%へ網消しを甘くした。利欲の為に手段を選ばない卑劣な犯行である。
18禁ゾーニングの努力は青少年への配慮であって今回はワイセツ図画だから無関係。
「絵のリアルさを素人の警察が語るのはおかしい」などと放言を行い、
全く反省の色は見えないが、44日間の拘留などで社会的制裁を会社にダメージとして
受けているので、求刑通り、懲役一年。執行猶予三年の判決を言い渡す。
 執行猶予とは三年以内に同じような犯罪を犯したら今回の懲役一年をプラスして
刑務所に入れますよ、後は無いって事。

「新文化」
http://www.shinbunka.co.jp/
「朝日新聞」
http://www.asahi.com/national/update/0113/012.html
「毎日新聞」
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20040113k0000e040083000c.html

[418] 裁判所へ行ってみた13-2 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/01/13(Tue) 18:07  


 閉廷後の報道関係者のみの記者クラブの後の記者会見には
傍聴席の支援者と記者などを含めて40人くらい。
今回の判決を受けての被告弁護側からの姿勢を語りました。
といっても、正式な判決理由を文章として熟読した後ではないと
明確な事はいえないので、色々あいまいなお茶を濁しただけで終わったかも。
なんで現場でのぶっちゃけのオフレコも含めての説明です。
 主任の山口弁護士。敗訴に非常に残念。なぜ性秩序が求められるかで
述べられた判決理由は検察、弁護側、どちらも出していない主張です。
サイバー条約や現在の性犯罪の増加などがそれで、これも犯罪検挙数などは
警察のさじ加減でどうにでもなると色々議論にもなっているのだ。
だが今回、最後の判決で突然言われたのは後出しそのもので反論の機会がない。
これは裁判官の弁護士や検察への権限侵害で、非常識な裁判長の恣意的な判決理由である。
 サッカーの審判がロスタイムに突然負けてるチームに+二点とか選手の代わりに入れてあげて
試合終了、逆転とかみたいな、ふざけた話のようなもん。
 裁判史的な裁判所の姿勢としてもチャタレイ裁判までに大きく後退している。
性秩序は裁判所が絶対的正義で一方的に決めるものであり、国民の意思の
社会通念は、現在乱れていると定義され、それに従うべきだという裁判長の論理です。
このような傲慢で危険な判決は到底飲めないので、即日、控訴しました。
弁護側の各種の証人を立てた主張は全て棄却されました。だがそれに丁寧に理由を
つけてくれたので、控訴審での反論の余地はあります。これから作戦を練ります。
 貴志社長は「最初に結論有りき」。まさに今回の一審はこれにつき、
被告側の様々な証言は、根拠の無い裁判長の正義に全て否定されました。
(例えば、専門家の証言は感覚麻痺で、自分の正義にかなっている漫画初の警察の
審議は全然OKだったり、社会学の主流も否定。「蜜室」はエロ本だから
とりしまられて当然だと、この文化も否定。消しの自主規制も白消しも
憶測できるからダメ。雰囲気話がエロくて絵が上手いから性秩序を乱すワイセツ物(違法)だ。
お上に「このくらいのエロさの程度ならOK?」って事前検査してもらうのは憲法違反の検閲やん。
性犯罪の増加だって根本はこの不況の社会的不安でしょ、とか、まぁ色々)
 今後業界としては萎縮するかもしれない。漫画家もやる気が出ないだろう。
一年間戦ったが、一年猶予が延びただけ。ただこの本が残りました。
と自社の裁判闘争の本をちゃっかり宣伝。"転んでもただでは起きぬ"です。

 今後の予定、控訴審、高裁は仕切りなおしなので未定。ただ司法改革とかで
スピードが求められてる最近なので、今年中には二審も片がつくんじゃないの
ってのは現場の噂。歴代の表現裁判としても今までは罰金刑で済んでたのですが
今回の懲役判決は、青環法、都条例、昨今の規制の流れに乗った見せしめも
あるんじゃないか。
 業界への一言として山口弁護士。現在は薄氷の状況であり危機感を持って欲しい。
歴代裁判では色々負けてますが、今日までに表現の自由は広がってきています。
それは出版界の現場での努力、無責任かもしれませんが、皆さんも頑張って欲しいです。
 今後の当局の動きとしては、まだ一審判決で確定ではないけど、
あちらの都合なのでどうなるかは正直分からない。今回の裁判所の判決、
エロいからワイセツ物(違法)だ、と警察の消しの有り無しでの判断基準とは
大きな差がある。これがどちらの方向にすり寄るか、それともそれぞれ勝手かも
どうなるか分かりません。
 貴志社長の今後の会社の現実、運営方針としては今は真っ白。
帰って社員と相談して決めます。

 経歴や法廷での様子からも予測されてましたが、
裁判長が今回はそういう人で"はずれ"だった、という事でしょうか。
地裁と違って、高裁はベテランの定年間近の怖いものなしなリベラル良識派もいるそうで
その人に当たったら嬉しいな。とか、まぁリアルでシビアな現実でした。
検察がワイセツ概念の証拠立てに無能だったから、結論有りきな裁判官が
己の良心でしゃしゃり出たって感じでしょうか。

「わいせつコミック裁判 松文館事件の全貌」
http://www.shobunkan.com/michi/4-86086-011-X.html

[440] あ〜 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/01/24(Sat) 20:01  

松文館裁判の一審判決文です。
(AMI-MLの投稿より)
http://picnic.to/~ami/news/etc/040122hanketsu.txt

 これの朗読を素人の速記でメモってたのよ。多少違うトコは勘弁です。
ただ、そんなに外してはいないと思うけど。




[506] オフライン話 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/03/18(Thu) 01:27  


 え〜と、都内某所のホテルで行われた「貴志さんを励ますパーティ」を
のぞいてきました。参加者は松文館貴志社長と縁のある出版業界関係者や
ベテランの劇画系の漫画家。一部に私のような部外者に近い
フリーの若手漫画家など。内輪的なものなんで公的な重大発表などはありませんでしたが、
新しい情報を壁の花で少しばかり入手。二審の高裁ですが具体的日程は
まだ未定。ですが7月くらいに書類を出して、年内くらいには判決が出るかも
とか。一審みたく一年半とかはかからないみたいですね。気になる裁判官は
風向き悪し。ハードカバーの「わいせつコミック裁判」初版×000部売り切れ間近は
売れ行き良い方なのかな。品切れたらすぐ重版かけるって。




[716] 裁判所へ行ってみた14 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/09/14(Tue) 19:39  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の高裁控訴審、初公判を傍聴してきました。

 高裁も地裁と同じ霞ヶ関の建物の七階。部屋の規模も同じで
傍聴席は50数席。何か若い私服の人が多かったように見えたけど満席になりました。
 基本データは田尾健二郎裁判長。鈴木秀行、山内昭善、裁判官。
検察は南野、保坂と二人の名がありましたが、実際にいたのは一人のみ。
見た目は仏頂面のがさつっぽい4、50代。弁護人は山口、大西、望月のいつもの三人。

 法廷は5分。初回なので被告貴志社長の読み方から確認して、
次回の内容、日程を決めて終了。
 高等裁判所で行われる二審の控訴審とは地方裁判所で行われた一審の
審議について誤りがなかったかを再確認する場。ですので
一審で出された書類、証拠の認証となり、新たな証人や被告人などは
基本的には出たりはしないそうです。しかし、今回はその次回の内容を決める所で、
被告弁護側から新たな証人三人を呼びたいとのと、被告人質問を行いたいと
申し出が。今回の裁判長は第一印象は優しげな感じだったのですが
満席の傍聴席の社会的に注目されているとの圧力もあり、
いずれも認めてくれた模様。
 次回は、10/26午後2時より東京高裁718号法廷。
被告人への質問が行われます。

 恒例の閉廷後の説明会。警察のマル秘資料のワイセツ物取り締まり要綱を
証書として認めてくれそうだったり(中谷地裁裁判長の判決の
「警察への事前確認がない」に対しての反論用。同要綱内には
"業者からの問い合わせは一切受け付けない"とあるそうな)
被告人質問や新たな証人も認めてくれそうで、つかみはOK。
考えている証人とは某同人誌即売会代表や某劇画原作家。
刑法の新設を唱える学者先生やジェンダーセクシャリティ方面などの事。
それとは別に今年の「ヴェネチア・ヴィエンナーレ」(イタリアの美術祭)に
オタク文化の出展がある(村上隆どころではなく「週刊わたしのおにいちゃん」の
萌えぷにフィギュアが出る(?))そうで、
日本の二次元エロ文化は海外では芸術扱いされているんだ、とか立証するらしいです。
「ヴェネチア・ビエンナーレ第9回 国際建築展 日本館展示」
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0403/03-03.html

[761] 裁判所へ行ってみた15 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/10/26(Tue) 22:44  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の高裁控訴審、第二回公判を傍聴してきました。

 傍聴席は相変わらずの満席。ただ色んな人がいるんですねぇ。
背広の警察関係者っぽい人から、定年退職後社会勉強に遊びに来てる(?)
お爺様方なんかもいたり。検事は今回も一人。

 最初に「ヴェネチア・ヴィエンナーレ」のカタログを証拠物として
採用してもらいました。これはエロ漫画オタク文化が海外には
芸術として認めてられているんだ、方面の証明として。
 で、被告人質問が始まります。お題は3つ。一つはエロ漫画論。
文学の文体に当たるものは漫画では線である。その線は対象読者によって
異なり子供向けの漫画は手塚治虫やドラエもんのように誇張(ディフォルメ)された
簡素な美しい線。大人向けは「ゴルゴ13」「カムイ伝」「子連れ狼」
なんか(劇画ですか)のような複雑な線。「蜜室」は大人成人向けである。
性をテーマにした漫画で子供向けのラインでの作品は難しい。
線以外もストーリー、コマ割も作家性。絵と写真をよく比較されるが
同列で語るものではないと思っている。写真は誰でも撮れるのにたいして
絵はイメージを描く。自分の脳内のイメージを実際に紙の上に、
他者にも分かるように描けるには相当の修練が必要。絵は写実ではなく
裏にテーマ、メッセージを盛り込む。コマ割、ストーリーをつける
漫画という表現では更に。ビューティー氏の絵は業界でもトップクラスの技巧を
持っていると評価している。僅か16Pの漫画の中で性的興奮のみに終始するのではなく
キャラクターの顔やしぐさ一つで、その性格、その気持ち、その状況、様々な要素を
表現している。絵はそのものだけではなく、裏にたくさんのメッセージ、
伝えたいイメージが盛り込まれている。私も絵をやっていたが彼も絵画の影響もあるだろう。
美術では枯葉で秋、ただそれだけの風景描写で終わらずセンチメンタルとか
孤独とか様々なテーマが盛り込まれているのが絵だ。漫画も同様である。
 利益について。裁判ですから具体的な数字が色々出たのですが、
これは外野の私がペラペラ喋っていいことか分からないので、かいつまんで。
えーと、ただその数字の方も経理に疎い社長さんと実務の方で色々
打ち合わせ不足があったようで次回訂正するとか言ってました。
定価876円が2万冊売れたけど卸値は65%、印税印刷代などの原価代が200万で、
所得税とか税金引かれると、出版社への利益は売り上げの2割もないそうな。
 3つめ。地裁判決理由に"所轄官庁へ出向いて出版の確認を取っていない"
(エロさの程度をお上にお伺い立てろって事。これをおこたるということは
 確信犯だ。故意に違法なワイセツ物を頒布したと有罪喰らった)
とあるが、出版人としてこれはあり得るのか? あり得ない。
昔の軍国主義の思想統制、検閲と同じものだからだ。業界の他社を参考にしながら
その中でも比較的押さえ気味で出版していた。

 検察の質問。「被告は「蜜室」はワイセツではあるが、それより芸術としての
価値の方が高いと思っているのか?」そのワイセツ事態がよく分からない。
一審ではまさにそれを知りたかった。ラインを明確にして欲しい。提示されれば
私も商売人。法は犯すつもりはない。「ラインが分からないから司法に挑戦したと?」
違います。業界内では標準でやっていた。「これがワイセツ物だという違法な漫画は
見たことありますか?」だからそのワイセツ物が分かりません。
 裁判所側から。「絵には裏のテーマがあると言ってたが、
それは言葉で表現できることなのか?」便宜的に言葉で説明しましたが、イメージ。
それも受けてそれぞれで千差万別の何かです。音楽のような。
利益の話に関しての矛盾へのツッコミがあって最後に裁判長。
「裏のテーマとはメッセージ、思想という言葉におきかえてよいのか?」構いません。

 次回はちょっと先。12/9(木)午前10:30〜12:00、同法廷。
やることは、よく分からない。ちょっと私の体調が悪くってアンテナが3割減くらい
してたかも。閉廷後の解説では利益の話を持ち出したのは、量刑はもうけに
比例するから。裏ビデオなんかは取次ぎを通さないし自家製なんで利益率が高い。
逆転無罪を当然目指してますが、現実として有罪でも実刑は免れ罰金刑くらいで
すませたいと思っている。二審とは基本的に一審で最低限のことはなされているので
「十分に証拠は揃った、審議終了、判決に移る」と常に打ち切られる可能性があるもの。
だけど漫画オタク文化の文化芸術論の方向性に判事は興味を持ってくれた感じ。
このネタで引っ張れそう。何かあいまいな禅問答のような質疑は全て証言。一審と
重複するネタは使えない決まりなのでまわりくどくなってます。
分かりづらくってゴメンなさいとの事。

[791] 裁判所へ行ってみた16 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2004/12/09(Thu) 17:18  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の高裁控訴審、第三回公判を傍聴してきました。
 午前10:30からの法廷は傍聴席少なッ! と云っても中身も
それに見合うだけの物しかありませんでしたけど。傍聴席は20人くらい。
しかもそのうちの7、8人はどこかの大学院の先生と生徒。
内容は次回の打ち合わせ、事務手続きで正味10分ほどか。
 で、その今後の予定ですが来年の2/17(木)午後1:30から被告弁護側の
証人喚問。3/17(木)午前11:30より弁護人の弁論。
あくまで予定なのですが、二審控訴審も終わりが見えてきた感じ。

 閉廷後の説明会。今日の法廷の中身は2つ。
 1つは横浜桐蔭大学の河合教授(口頭で聞いたので全然違う人かも)の意見書を提出。
中身は犯罪統計の読み方。一審の判決理由にあった性犯罪は増える一方で
現在は十二分に乱れている。に対しての反論用。 実際、刑法の"強制ワイセツ罪"は
98年以降増えているが、これは取り締まる警察側の事情が変わった為。
女性捜査官を増やしたり、手続きの簡略化などでそれまでは、より軽い
地方条例の"迷惑防止条例違反"扱いだった軽微の痴漢行為(服の上から触るなど)を
強制ワイセツ罪に回すようになったからだ。
認知数と検挙数がほぼ一致する(大よそを実態を把握している)"殺人"は
戦後ずっと減少。強姦も増えてはいない。「治安の悪化」というのは嘘だというお話。
 2つめは次回の証人。名作ボクシング漫画「あしたのジョー」などの作者ちばてつや氏を
弁護側の証人として法廷に呼び、漫画・文化論を述べるとの事。
ちば氏は一審の初公判の時に傍聴席に顔を見せてたり、自身もエロと同じように
世の潔癖症な人たちからは忌み嫌われる暴力描写で、抗議クレーム喰らった
苦い経験があり、創作表現は規制ではなく読者の人気淘汰に任せるべきだ
という漫画も描いたことあるそうな。

 次回は2005年2/17(木)午後1:30から場所はキャパの広いトコに
特別に移して東京高等裁判所725法廷で。
テレビカメラが入った一審の判決公判並のマスコミ10席を用意とか、
整理券、抽選の用意をするだの、ちょっと話題になるような公判になるかも。
 私も早めに行ったりするつもりですが、先着順ではなく抽選で外れちゃって
入れなかった時はスマヌです。

[843] 裁判所へ行ってみた17 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2005/02/17(Thu) 23:58  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の高裁控訴審、第四回公判を傍聴してきました。

 一連の裁判で初の傍聴抽選となった来訪者は開廷20分前に締切りで100人くらい。
52席なんで約1/2の確率に、私は当たり。マスコミ席も特になく
被告の関係者から皆、同じように抽選でした。集まった人たちは
当然ながら半分以上が見ない顔。2、30代の若い人が多かったですね。
腕章などは付けてはいませんが記者や編集者、作家さんもいたようで
挨拶、名刺交換を色々としてました。

 まず、証拠物に「誌外戦」(90年の有害図書問題を受けコミック規制に反論する漫画家たちの
メッセージ集。"コミック表現の自由を守る会"(石ノ森章太郎 さいとうたかを 里中満智子 紫門ふみ
山本直樹 ちばてつや などが面子)編集)を提出。私は93年の2刷を03年のロフトプラスワンの
イベント時に連絡網AMIから買って持ってたり。
 「おまたせしました、先生」と裁判長が迎えたのはちばてつや氏、66歳。
裁判官よりも検事よりも若手の弁護士団よりも年長者です。はじめにプロフ。
「あしたのジョー」などの数々のヒット作は説明の必要もなく、
文星芸大で来年度から漫画選考コースの教鞭を取るそうで、
弁護士の質問に応える形で漫画芸術論を語ります。
 漫画は世界中にある。だが日本の漫画は他と違って多様なジャンルがある。
既存の子供向けだけではなく、40、50代が読む「ビックコミック」のような
経済、哲学、歴史、人生などをテーマにした大人向けの文化でもある。
漫画の起源は現在に直接繋がるのは戦後からの異様な発展だが、
最初の漫画は「鳥獣戯画」。かえるが喋っている、吹き出しを描いている。
「源氏物語」は絵巻物で絵と文が別枠なので少し違うが…。戦前は娯楽が少なく
ラジオもなかった時代。少ない中のひとつで子供の情操教育に大きな影響を与えた。
しかし時がたち文化が広がることで映画でも小説でも何でもそうですが、
色々な花が開く。可憐なすみれだったり、健康的なひまわりだったり、
湿地帯に咲くような愛でる人を限る花もある。
その日本の多様な漫画は、世界に広がりアジアでは日本に追いつけ追い越せと、
商業的には漫画から派生したアニメーションは世界中のその8割が日本製のアニメ
だとかを、最近調べました。
 「性をテーマにすることは?」大人も読む今の漫画。人の営みの一つですから
避けては通れない物。ドラマを描く時に必要にもなる。「判決では露骨とあるが?」
私も露骨に見えます。子供には見せたくないが、大人が読む分には趣味の範囲。
販売方法も実際調べてみてコーナーやビニール梱包。成人マークなどゾーニングは出来ている。
「技術的にはどうでしょう?」巧い。からみは相当なデッサン力が必要です。以前
すもうの漫画を描いた事があるが組むのを描くのに苦労したものです。デッサンの練習には
"春画を描け"というのが昔からのアドバイスとしてある。キスシーンもあまり慣れていないので
バランスを取るのに、普通ページ/1時間ですが3・4時間かかって担当編集に迷惑をかけた
覚えもあります。「生々しすぎないか、性的刺激は高すぎる、とありますが?」
私も正直そう思いますが、でもそこはその作家の感性ですから。性的興奮はもう年ですからね。
ただとりあえず、巧くないと作品ではない。トイレの下種な落書きとは違い、
性的刺激を与えるには女性の美を表現する技術が必要。
漫画には写真と違いドラマがある。行間がある。話がある。「フィクションも多いですよね?」
それはよく分からないが、人の業、人の哀しさなど描きたいんじゃないか、それもドラマ。
「判決に反道徳的とあるが?」それも人の一側面。それも人の一部。ドラマを描きたい。
「それを規制となると?」文化には広い大きな土壌が必要。様々なものがあって
しかるべきで、無闇に選別したり枠を制限すると弱々しい花しか咲かなくなる。
春画を嫁入り道具として持たせたような日本人本来のおおらかさを大事にして欲しい。

 「社長、編集長、漫画家が逮捕だったが?」以前、手塚治虫の性教育の漫画が
大阪の主婦たちによって焚書されたことがある。そういう母親の気持ちは分かる。
それはいいと思う。だが、国が体制が上から縛るのはおかしい。
そこは国民我々に任せて欲しい。人気がなければ売れない。その自然淘汰に任せて欲しい。
そんな「――と、僕は思います!!」という漫画を93年に描きました(「誌外戦」に収録)。
その中に「あしたのジョー」のワンシーン。力石のアッパーで血染めのマウスピースを
吐き出すジョー。ここだけ見ると残酷かもしれないが、前を読んでくれ。
ここまで描かないと二人の馴れ初め、友情、特訓、その果てに相対するリング。
そのドラマが描けない。前から読んでもらえれば、こうなるのは誰にだって
分かってもらえるはずです。
 この漫画で言いたかった事は…戦中、私の子供時代。憲兵がとても怖かった。
彼らの一判断で身近な生活の様々なものを縛られ、公のマスコミもしばり、
目も耳もふさがれ日本は戦線を広げた。昭和初期、不安な情勢を反映して
エログロな退廃的文化が流行った時期があった。それを軍が撲滅させ、心ある人は皆、
拍手喝さいしたものだが、他の物も全て統制化に入って戦争へ突入した。
終戦も満州で向かえ関東軍に取り残された経験があり、
太平洋戦争を原体験の恐怖として語っていました。

 検察側の質問。「先生にはワイセツという概念がありますか?」あると思います。
「「蜜室」はワイセツでしょうか?」「異議有り、それは法律学上の
ワイセツでしょうかそれとも一般的な?」「そんな事、先生に言っても分からんでしょ。
はい、一般的な方ですね」証拠の再検討の二審で今まであまり喋る仕事も
なかった検事なんですが、なんかいや〜な口調。私は個人的にいやらしい本だと思います。
社会性のない子供にも見せたくない。善悪があまり分からないまま興味本位で
見るべきものではないと思う。でも大人は多様な趣味の一つ。
だから良い悪いで有りか無しかではなく、区分けゾーニングを心大らかに考えて欲しい。

 以上で二審の参考証言は終わり。次回は3/17(木)11:30〜。718号法廷。
弁護士の弁論です。一審時の最終弁論に似たような物。被告の控訴審なんで
論告求刑は今回はありません。公判後の説明会では判決は5月くらいじゃないか、など。
 ちば先生を真ん中に迎えての説明会。裁判官や検事などは尊敬の眼差しの世代。
中身の大きさと比べるとイマイチ話題性に欠けるこの裁判だが、
判事側にも一般国民側にも良いアピールになっただろう。
控訴審は普通は一回。一年もの間異議申し立てを続けられたのは皆さんのおかげです。
 ちば先生の感想は「法廷に立つのは生まれて初めて。
規制がエスカレートするのが何より怖い」
携帯カメラのシャッター音がパチパチ、息子さんも傍聴していたそうな。
 いつも証言は調書として受け取っているのですが、今回のはおって正式公開するつもり
だとか。記者の質問で、裁判の成り行き。「ワイセツをどう定義したいのか?」
一審判決はチャタレイ裁判まで退行している。私たちは新たなゾーニング論。
絶対的なワイセツ物という定義はなく、ワイセツ物とは相対的な物である、という考え。
非性的空間に性的を持ち込むことをワイセツと定義したく思っている。
それを置いておいても、文章の基準を絵に持ってこられても困るし、
それも昭和54年の四畳半判決から裁判所的には時間が止まっていて、警察の方が
世の中の流れに乗ったリベラルになっているという逆転現象がおきている。
ぶっちゃけ裁判所の基準では成年じゃない青年誌でもとっ捕まえることが出来るようなもので
お上の理念と巷の現実が乖離してるのは日本らしいといえばらしいけど、
やはり何とかしたいと思ってます。

「ちばてつやホームページ」(2/18の日記で「〜と僕は思います!」全編公開中)
http://www.aruke.com/tetsuya/
「Yahoo!ニュース」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050217-00000126-mai-soci
「毎日新聞」
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050218k0000m040074000c.html

[851] 3/8の更新について 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2005/03/08(Tue) 19:36  


 ちばてつや証人の弁護人からの質疑応答の方、
「松文館裁判」の方で、公開されました。
http://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9018/shoubun-kouso.html

[862] やば… 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2005/03/25(Fri) 19:30  

 松文館裁判の高裁の第五回公判。
3/17なの忘れてたのを、今気がついた…。
弁護士の最後の総括。弁論だったから、地裁の時の最終弁論のように
資料公開するかなぁ。
 ざっとネットを検索した限り、このことに触れてる人や傍聴した人
見つからないんで、うーむ。
せっかく今まで皆勤賞だったのに、くやしいな。17日は何やってたんだっけ。

[938] 裁判所へ行ってみた18 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2005/06/16(Thu) 15:10  


 刑法175条わいせつ図画の頒布・販売・公然の陳列の罪に問われている
松文館社長の高裁控訴審、第六回公判を傍聴しようと行ってきました。
 今までの流れは一括したページを作りました。
http://www87.sakura.ne.jp/~cou/matu.htm

 高裁の判決公判とあって午前10時からも傍聴席39席はオーバーし抽選に。
5.60人くらい並んでいたので2/3くらいの確率でしたが私はハズレてしまいました。
法廷の外で待つことすぐ、判決を聞いた記者7、8人がダッシュで飛び出してきて
判決をそれぞれの社へ速報連絡、判決理由要旨も今回は30分ほどで終了。

 以下はその後、弁護士会館で行われた説明会からの情報です。
前に記者クラブがなかったのか説明会にはテレ朝、TBS、テレ東のカメラが入り
新聞社、雑誌社、フリーのライターさんなども多数同席。
松文館関係者や支援者などを含めて50人くらいいたでしょうか。

 一審判決の懲役一年、執行猶予三年の有罪を破棄し
 二審判決は罰金刑150万円の有罪。
 東京高等裁判所、田尾健二郎裁判長。

 刑法175条は憲法21条(表現の自由、知る権利)、31条(罪刑法定主義や故意の可否)に
反しない合憲は地裁と同じ。警察の捜査判断にも問題は無い。
チャタレイ最高裁判決(昭和32)の三要件。普通の人の羞恥心を害すること、
性欲の興奮刺激を来すこと、善良な性的道義観念に反すること。を
四畳半事件(昭和55)"好色的興味にうったえるものと認めるか否かと、その比重"という制限を
付けた上で、それでも「蜜室」は思想、芸術性も見えないエロ本として違法と。ここは一歩前進。
地裁ではモラルの番人として流動する社会通念より上に裁判官の
ワイセツに対する事実認定があるという物だったが、四畳半事件の法例を持ち出し
多少は枷が出来た。
 ここから新しい点を二点。絵は実写より性的刺激に劣る物と司法が認定。
今まで175条の量刑は規模、対応、利益のみで罪の重さを問われていたが、
これらワイセツ性の強弱が新たに加わった。
もう一点はゾーニングも事実認定。18禁、ラベリング、区分け販売、ビニール梱包、
など見たくない人に見せない事、青少年に見せない事、その努力への
理解を示した。しかしゾーニングしようとも175条の定義する頒布には
変わらないと、法解釈の点で弁護側の意見を棄却。
 地裁と比べると減刑となった理由はこの辺りのようです。
才気豊かな学者先生の噛み付きと、カリスマちばてつや先生の証人の差だったら
困りますね。判決理由は後日、なんらかの形で公開予定だそうです。

 貴志社長のコメントの概要。一審判決の懲役1年3年の執行猶予、
そして逮捕以来の2年半は長い。漫画家も怖がり、消しも大きくなり、
銀行からの融資も厳しくなった。一人ならばいくらでも戦えるが
従業員のいる会社社長の身、戦うのは苦しい。そんな中、みなさんのご支援を受け
ここまでこれました。ありがとうございます。無罪でないのは当然残念だが
現実問題として懲役刑で無くなったのは、正直ホッとしています。
 基本的には最高裁まで争う気持ちはあるのだが、色々会社経営の事情もあり
現在の所上告するかは検討中、融資先を回ったりしてこれから考えます。

 二審になってやっと裁判の形をなしてきた判決となりました。
故意の認識。警察内の資料、ワイセツ物取り締まり要綱にある
業者からの内容の是非に対する質問は一切受け付けない
(殺人などは別ですが意図的でないものは刑事罰にはならない)。
辺りはスルー(認めれば検閲の薦めだし、認めないとどこが基準か分からない?
175条の実際的な一番の問題点)されてしまったが、高裁までは事実認定の場。
その場でゾーニングを今の現実、事実として認められた事は大きく、
表現裁判としてやっと一歩踏み出せました。
 最高裁は一転して憲法違反、法解釈などを裁定する場。
175条の保護法益(害したものが無いのに罰は与えられない)はどこにあるのか?
国が道徳を法で縛るのは発展途上の国(?)。法と道徳の分離の流れが大きくなってる先進国(?)の今
明治憲法を踏襲したチャタレイ判例を引っ張る国のモラルとしての絶対的なワイセツ論。
そうではなく非性的空間に性的を持ち込む(そうならないようにゾーニング)
相対的なワイセツ論。刑法の上にある憲法、刑法175条の違憲合憲。
それらの裁定を下すのは司法の頂点、最高裁の権限。
 ただ上告するかどうかも分からないし、"千三つ"と呼ばれるような最高裁の狭き門。
上告棄却という紙切れ一枚で門前払いのダメだし終了もよくある事らしいです。
一審のような前時代的な高圧的な判決だったら到底飲めなかったでしょうが、
現実的な妥協案の量刑が出た今、一企業としてはこれで終わる大人の選択も十分ありそうです。
21世紀の始めに残すような表現裁判としての気概があるのなら最後までいくべきでしょうが
周りもソコまで盛り上がってないしなぁ…。どうなるのかな。

「asahi.com」
http://www.asahi.com/national/update/0616/TKY200506160084.html
「新文化」
http://www.shinbunka.co.jp/
「読売新聞」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050616-00000029-jij-soci
「弁護士山口貴士大いに語る」
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/06/post_1028.html


[948] あづい… 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2005/06/28(Tue) 00:44  


 松文館裁判。最高裁へ上告したようです。
21世紀の表現裁判として憲法・刑法解釈を問う、
社長&弁護士団の本懐は、ここから始まります
(下級審では画期的な判決などまず出ないので)。

「読売新聞」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050627ic21.htm

[74] 松文館裁判判決 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2007/06/16(Sat) 19:55  


 05年の二審判決を不服として最高裁へ上告していましたが
07年6/15にその最高裁より上告棄却の判断がくだり
罰金刑150万円の有罪が確定しました。

「時事ドットコム」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007061501175
「YOMIURI ONLAIN/読売新聞」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070615i315.htm
「弁護士山口貴士大いに語る」
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/

 2002年日韓W杯の終わった後の秋の逮捕以降長いこと続いていた
松文館事件もこうした幕切れとなりました。
この裁判の判例(確定された二審判決理由)で新たに残したものは
漫画のわいせつ罪は罰金刑。漫画のわいせつ性は実写より低い。くらいでしょうか。
法律的な理由云々は表現の自由とは言っても結局エロい物はダメ。
一審よりは刑が軽くなったので、法廷で争った意義はあったかな。

 関係者の皆様、興味を持ってくれた方々、お疲れ様でした。ありがとうございました。

[81] ちょっと更新 投稿者:NOLIA(管理人) 投稿日:2007/07/10(Tue) 23:20  

 先月15日の松文館裁判、最高裁へ上告棄却、二審の罰金150万有罪確定の
ニュースを知ってネットで感想を見てまわっていたら、裁判に関係したサイトを見つけたので
許可をいただいてリンクに追加。
「いざこざの外」
http://plaza.rakuten.co.jp/bihatuyome/
 対象となった作品の作者ビューティヘア氏の奥さんの書くブログです。
当事者に近しい者としての目線から裁判に関して色々綴っています。
真実を究明するのが裁判の法廷。21世紀の表現裁判として様々な目線から
多角的に見て考えることでより真実へ近づけるかと思います。
 まぁこの裁判自体も人間の業。高裁で現状維持ウヤムヤな妥協案で終わり
最高裁は憲法解釈を拒否して逃げちゃって終わったんだけど。

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